切り抜きチャンネルを始めるとき、多くの人が最初に確認するのは「元配信者から許可を取れるか」です。しかし、許可を取ることと、YouTubeで収益化できることは別の話です。
収益を得るには2つの関門があり、それぞれ判定する主体も基準も違います。
- YouTube パートナー プログラム(YPP)の参加条件 — 登録者数と再生時間の数値基準。2段階に分かれています
- 「再利用されたコンテンツ」の審査 — チャンネルの中身に対する審査
このうち2つ目が、切り抜きチャンネルにとって本当の関門です。YouTube公式のポリシー原文をもとに整理します。
関門1 参加条件
登録者数・再生時間などの数値。2段階ある
関門2 中身の審査
「再利用されたコンテンツ」に当たらないか。切り抜きの本当の関門
収益化
関門1は数値の条件、関門2はチャンネルの中身の審査です。判定する主体も基準も違います。
関門1 YouTubeパートナープログラムの参加条件
まず数値の条件です。ここは2段階に分かれており、段階によって得られる収益の種類が違います。日本は両方の対象地域です。
段階1 拡充版YPP(登録者500人〜)
YouTubeは「視聴者ファンディング機能や、一部のショッピング機能をいち早く、より多くのクリエイターに」提供するとして、拡充版のYPPを設けています。条件は次のいずれかです。
チャンネル登録者数が 500 人以上で、直近 90 日間にアップロードした有効な公開動画が 3 本以上、かつ直近 12 か月間の対象となる動画の総再生時間が 3,000 時間以上である。
チャンネル登録者数が 500 人以上で、直近 90 日間にアップロードした有効な公開動画が 3 本以上、かつ直近 90 日間の対象となるショート動画の視聴回数が 300 万回以上である。
通常版にはない「直近90日間に公開動画3本以上」という条件が入っている点に注意してください。投稿が止まっていると満たせません。
この段階で使えるようになるのは、メンバーシップやSuper Chat・Super Thanksといった視聴者からの直接支援と、一部のショッピング機能です。広告収益はまだ含まれません。
段階2 広告収益(登録者1,000人〜)
広告とYouTube Premiumからの収益分配を受けるには、次のいずれかが必要です。
チャンネル登録者数が 1,000 人以上で、直近 12 か月間の対象となる動画の総再生時間が 4,000 時間以上である。
チャンネル登録者数が 1,000 人以上で、直近 90 日間の対象となる公開ショート動画の視聴回数が 1,000 万回以上である。
ここで注意したいのが、YouTubeの案内にあるこの注記です。
ショート フィードで視聴されたショート動画の視聴回数による有効な総再生時間は、有効な総再生時間 4,000 時間の要件にはカウントされません。
つまり、ショート動画をいくら伸ばしても4,000時間のカウントには入りません。ショートで攻めるなら1,000万回のルートを狙うことになります。
1拡充版YPP(登録者500人〜)
- チャンネル登録者数 500人以上
- 直近90日間にアップロードした有効な公開動画が3本以上
- 直近12か月の総再生時間3,000時間以上 または 直近90日のショート視聴回数300万回以上
満たすと: メンバーシップ・Super Chat・Super Thanksなど視聴者からの直接支援と、一部のショッピング機能
2広告収益(登録者1,000人〜)
- チャンネル登録者数 1,000人以上
- 直近12か月の総再生時間4,000時間以上 または 直近90日のショート視聴回数1,000万回以上
満たすと: 広告収益とYouTube Premiumの収益分配
いずれの段階も、対象地域に住んでいること・2段階認証プロセスがオンであることなどの共通条件があります。日本は両方の対象地域です。
そのほかの参加要件
数値以外にも要件があります。拡充版の案内に挙げられているのは、チャンネル収益化ポリシーへの準拠、対象の国または地域に拠点があること、Googleアカウントで2段階認証プロセスがオンになっていること、有効なYouTube向けAdSenseアカウントが1つリンクされていることです。
2段階認証は見落としやすいので、申し込む前に確認しておいてください。
収益化を維持する条件もある
参加した後にも条件があります。YouTubeの案内にはこう書かれています。
動画のアップロードまたは [投稿] タブへの投稿が6 か月以上行われていないチャンネルの収益化が無効になる場合があります。
一度収益化したら放置してよい、というものではありません。
関門2 「再利用されたコンテンツ」の審査
数値条件を満たしても、次にチャンネルの中身が審査されます。ここで問題になるのが「再利用されたコンテンツ」というポリシーです。定義はこうです。
再利用されたコンテンツとは、すでに YouTube や他のオンライン ソースに存在するコンテンツを再利用し、独自の解説、実質的な変更、教育やエンターテイメント上の価値が十分に付加されていないチャンネルを指します。
切り抜きは、定義上まさに「すでに存在するコンテンツの再利用」です。だからこそ、独自の解説・実質的な変更・付加価値があるかが審査の焦点になります。
許可が取れたら終わり、ではないのがこの関門です。ここから先が本番。
許可を得ていても違反になりうる
ここが最も誤解されている点です。YouTubeのポリシーには、こう明記されています。
他者のコンテンツを流用し、最小限の変更を加えただけで独自の作品であると主張することは、このガイドラインに違反します。(中略)これは、元のクリエイターから許可を得ている場合にも当てはまります。
「収益化が許可されない例」のリストにも、許可の有無に触れた項目が2つあります。
さまざまなアーティストの曲のコレクション(許可を得ている場合も含む)
他者のコンテンツのプロモーション(許可を得ている場合も含む)
元配信者の許可は、著作権の問題をクリアするために必要です。しかし、それはYouTubeの収益化審査を通ることを意味しません。許可は必要条件であって、十分条件ではない、というのが公式ポリシーの構造です。
元配信者の許可がある
著作権の問題はクリア
元配信者の許可がある
収益化審査は別
「これは、元のクリエイターから許可を得ている場合にも当てはまります」と明記されています。
著作権の申し立てを1件も受けていない
審査に通る根拠にならない
再利用コンテンツのポリシーは著作権違反への措置から切り離されています。
公式ポリシーの原文は上に引用したとおりです。2つは別の仕組みとして動いています。
著作権の問題とは切り離されている
同じ箇所には、著作権との関係もはっきり書かれています。
再利用されたコンテンツは、YouTube における著作権違反(著作権、許可、フェアユースに基づいていないコンテンツの使用)に対する措置からは切り離されています。つまり、コンテンツに対する申し立てをまったく受けていない場合でも、チャンネルがコンテンツの再利用のガイドライン違反となる可能性があります。
著作権の申し立てが1件も来ていないことは、収益化審査に通る根拠になりません。2つは別の仕組みとして動いています。
収益化が認められる例と認められない例
ポリシーには具体例が挙げられています。切り抜きに関係する部分を抜き出します。
認められる例として挙げられているもの
他のクリエイターの映像を編集し、ストーリーや解説を追加している
動画の再利用コンテンツに音声や視覚効果を加えて編集された映像で、実質的な編集が行われており、チャンネル独自のコンテンツであることがはっきり示されている
批評する目的でクリップを使用している
認められない例として挙げられているもの
お気に入りの番組の一部を切り取った複数のクリップを編集でまとめただけで、説明がほとんどないか、まったくない
別のオンライン ソースからダウンロードまたはコピーしただけで、実質的な変更が加えられていないコンテンツ
線引きの基準として、ポリシーはこう書いています。
つまり、視聴者が元の動画とあなたの動画の間に有意義な違いがあることを見て取れる場合に、コンテンツの再利用が許可されます。
「切り取って並べただけ」は認められない側の例に、「編集してストーリーや解説を足したもの」は認められる側の例に、それぞれ明示されています。テロップ・構成・解説といった編集作業は、見栄えの問題ではなく収益化の可否に直結する要素だということです。
判定はチャンネル全体に及ぶ
もうひとつ重要なのが、審査の単位です。
再利用されたコンテンツに関するポリシーは、チャンネル全体に適用されます。YouTube のガイドラインに違反している動画がある場合、またはチャンネルの所有者がコンテンツの作成者であると明確に判断できない場合は、チャンネル全体で収益化が無効になる可能性があります。
審査担当者が見るのは動画だけではありません。同ページによれば、チャンネルの説明・動画のタイトル・動画の説明も確認の対象です。1本ずつの判定ではなく、チャンネル全体として「誰が作ったものか」が判断されます。
2025年のポリシー更新について
このポリシーは更新されることがあります。YouTubeのページには、2025年7月15日付でこう記載されています。
「繰り返しの多いコンテンツ」に関するポリシーを若干更新し、繰り返しの多いコンテンツだけでなく大量生産されたコンテンツもこれに該当するということをより明確にします。また、このポリシーの名称を「繰り返しの多いコンテンツ」から「量産型のコンテンツ」に変更します。(中略)なお、解説、クリップ、コンピレーション、リアクション動画などのコンテンツを審査する、「再利用されたコンテンツ」に関するポリシーには変更ありません。
再利用コンテンツのポリシー自体は変わっていませんが、量産型のコンテンツに対する扱いは明確化されています。テンプレート的な動画を大量に投稿する運用は、この観点でも見られることになります。
まとめ
- 収益化には2つの関門がある。YPPの数値条件と、再利用されたコンテンツの審査
- 数値条件は2段階。登録者500人(+直近90日に公開動画3本+3,000時間 または ショート300万回)で視聴者ファンディングとショッピング、登録者1,000人(+4,000時間 または ショート1,000万回)で広告収益。日本は両方の対象地域
- ショート動画の視聴時間は4,000時間の要件にカウントされない。2段階認証プロセスのオンも要件
- 6か月以上アップロードや投稿がないと収益化が無効になる場合がある
- 元配信者の許可を得ていても、再利用コンテンツのポリシー違反になりうるとYouTubeが明記している。許可は著作権のための必要条件で、収益化の十分条件ではない
- 著作権の申し立てがゼロでも、再利用コンテンツの違反にはなりうる(2つは切り離された仕組み)
- 判定はチャンネル全体に及び、動画・チャンネルの説明・タイトル・説明文が見られる
- 分かれ目は「視聴者が元の動画との有意義な違いを見て取れるか」
ポリシーは改定されます。実際に申請する前に、必ずYouTubeの該当ページで最新の内容を確認してください。
