「開業届は開業から1ヶ月以内に出す」——検索するとどこにでも書いてあるこの期限は、現行の所得税法の条文とは違います。条文・国税庁の案内・様式の3つの原文は開業届の共通編で引用しています。

切り抜き動画の収益が入りはじめると、開業届を出すべきかどうかが気になってきます。結論から書くと、切り抜きを継続的な収入源としてやっているなら、開業届は出す対象になります。出すこと自体は無料で、書く欄もそれほど多くありません。この記事では、切り抜きの場合にどこが分かれ目になり、何と書くのかを整理します。

期限・判定軸・書く欄・扶養と失業給付は共通編にまとめてあります。ここでは切り抜きで効くところだけ。

切り抜きで事業と呼べる状態はどこからか

第229条が対象にしているのは「事業所得……を生ずべき事業」を開始した人です。判定軸は通達35-2の「社会通念上事業と称するに至る程度か」と帳簿の保存で(原文は共通編)、切り抜きに当てはめると次の形になります。

事業所得か雑所得かの判断材料
  • 継続的に投稿していて、毎月収益が入っている

    事業所得の余地

    その場合は帳簿の記録・保存が前提になります。

  • 取引を記録した帳簿書類の保存がない(収入金額が300万円以下)

    雑所得に留意

    通達35-2の注書きが、業務に係る雑所得に該当することに留意すると定めています。

  • 単発で少額の収入があっただけ

    雑所得の可能性

通達が示すのは判定の軸と材料であって、この表で結論が決まるわけではありません。実態で変わるため、迷う場合は税務署に確認してください。

切り抜きの場合に何と書くか

記載欄の一覧と本人確認は共通編にあります。切り抜きで手が止まるのは2つの欄です。

  • 職業・屋号: 職業欄に何と書くかは切り抜き特有の論点があるので、開業届の「職業欄」に何と書くかで詳しく扱っています
  • 事業の概要: 様式に「できるだけ具体的に記載します」とあります。切り抜きなら、動画の編集・投稿による広告収益などの実態をそのまま書きます

このサイトの運営者は、紙の様式に手書きせず、質問に答えて入力すると開業届と青色申告承認申請書を作れるマネーフォワード クラウド開業届ADのようなサービスで作りました(体験談)。

青色申告承認申請書を一緒に出す

開業届の様式に「青色申告承認申請書」の提出の有無を書く欄があるくらいで、同時提出が想定されています。期限は開業日から2ヶ月以内(1月15日までの開業ならその年の3月15日)という開業届とは別の時計で動くので、開業届だけ先延ばしにしていると青色の申請期限のほうが先に来ます(原文は共通編)。切り抜きの経費は編集ソフトのサブスクや外注費が中心で、帳簿はカード連携で回しやすい形なので、青色申告特別控除は取りにいきやすい働き方です(会計ソフトの記事)。

共通の手続きは共通編へ

期限(「1ヶ月以内」ではなく確定申告期限まで)・判定軸・書く欄と本人確認・青色申告承認申請書の期限・扶養と失業給付は開業届の共通編へ。

まとめ

  • 開業届の期限は「開業から1ヶ月以内」ではなく開業した年分の確定申告期限まで(条文・案内・様式の3つで確認できる・共通編)
  • 切り抜きで事業側に近づくのは継続的な投稿+毎月の収益+帳簿の保存
  • 手が止まるのは職業欄と事業の概要。概要は実態をそのまま書く
  • 青色申告承認申請は開業日から2ヶ月という別の期限で動く。切り抜きは取りにいきやすい

開業届を出したら(または出す前でも)、次に気になるのは収入がいくらから確定申告が必要かです。個別の事情で判断が変わる部分は、この記事では断定していません。迷ったら納税地の税務署に確認してください。