開業届の記入で最初に手が止まるのが「職業」の欄です。切り抜きチャンネルという職業名は無いし、「YouTuber」と書いていいのかも分からない。

結論から書くと、職業欄に決まった書き方はありません。国税庁が様式に付けている「書き方」には、職業欄の記載方法の指定が無いためです。ただし、職業欄と「事業の概要」欄に書いた内容は、個人事業税という都道府県の税金の業種判定に関わりえます。この記事では、その仕組みまで含めて整理します。

職業欄に決まった書き方はない

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)の様式には「職業」欄と「屋号」欄があります。一方、様式に付属する国税庁の「書き方」を確認すると、記載方法の指定があるのは所得の種類・給与等の支払の状況・個人番号まわりなどで、職業欄の書き方についての指定はありません

つまり、実態が伝わる言葉で書けば足ります。切り抜きチャンネルなら、たとえば次のような書き方が考えられます。

  • 職業: 「動画編集」「映像コンテンツ制作」など、活動の実態に合う簡潔な名称
  • 事業の概要: 様式に「できるだけ具体的に記載します」とあるので、こちらで具体化する(例: 「動画の編集・投稿および広告収益の獲得」)

職業欄は簡潔に、概要欄で具体的に、という分担で書くと迷いにくくなります。

職業欄が関わるもの — 個人事業税

職業欄の書き方が「どうでもよくない」理由が、個人事業税です。これは所得税(国税)とは別の、都道府県の税金で、地方税法にこう定められています。

個人の行う事業に対する事業税は、個人の行う第一種事業、第二種事業及び第三種事業に対し、所得を課税標準として事務所又は事業所所在の道府県において、その個人に課する。

ポイントは、課税対象が法律に列挙された業種(法定業種)に対して定められていることです。税率は業種の区分ごとに決まっており、東京都主税局の案内では第1種事業(37業種)が5%、第2種事業(3業種)が4%、第3種事業(30業種)が5%(一部3%)と整理されています。第1種には請負業・出版業・写真業など、第3種にはデザイン業・コンサルタント業などが並びます。

そして、地方税法には事業主控除があります。

事業を行う個人については、当該個人の事業の所得の計算上二百九十万円を控除する。

年間を通して事業を行った場合、事業の所得が290万円以下なら、この控除によって個人事業税はかからない計算になります(1年未満の場合は月割りです)。切り抜きを始めたばかりの段階では、まず意識するのは所得税・住民税で、個人事業税は所得が伸びてきてからの論点になります。

切り抜きはどの業種に当たるのか

ここは断定できません。切り抜きの収入といっても、依頼を受けて編集する請負に近い形もあれば、自分のチャンネルの広告収益が主という形もあり、実態によって見え方が変わります。どの業種区分に該当するか(あるいはどれにも該当しないか)の判定は都道府県が行うので、所得が事業主控除の水準を超えてきたら、所在地の都道府県税事務所に確認してください

開業届の職業欄・事業の概要欄は、この判定の際に活動の実態を伝える情報になるため、実態と違うことを書かない、という一点だけ守っておけば大丈夫です。

税務署とは別に、都道府県への申告書がある

見落としやすいのですが、税務署への開業届とは別に、都道府県税事務所へ提出する「事業開始等申告書」があります。たとえば東京都の案内はこうです。

都内において、個人で事業を開始した場合は、事業の開始の日から15日以内に「事業開始(廃止)等申告書」を所管の都税事務所等に提出してください。

東京都は開始から15日以内で、税務署への開業届(その年分の確定申告期限まで)より早い点に注意してください。様式や期限は都道府県ごとに定められているので、お住まいの都道府県税事務所のサイトで確認してください。

まとめ

  • 職業欄に決まった書き方はない(国税庁の「書き方」に指定が無い)。実態が伝わる簡潔な名称でよく、具体的な内容は「事業の概要」欄に書く
  • 職業・概要に書いた内容は、個人事業税(都道府県税)の業種判定に関わりうる。実態と違うことを書かない
  • 個人事業税には事業主控除290万円があり、年間営業で所得290万円以下ならかからない計算になる。超えてきたら都道府県税事務所に確認
  • 税務署への開業届とは別に、都道府県への「事業開始等申告書」がある(東京都は開始から15日以内)

開業届そのものの出し方・期限は、親記事切り抜きチャンネルの開業届の出し方で整理しています。