生成AIを使った副業は、収入が入りはじめるのが早い働き方です。記事作成の納品、イラストの受注、ストックイラストの販売。気づいたら毎月入金がある、という状態になってから「開業届って出すものなの?」と検索する人がほとんどだと思います。

結論から書くと、継続的な収入源としてやっているなら、開業届は出す対象になります。出すこと自体は無料で、1枚の書類です。この記事では、期限・線引き・AI副業ならではの書き方を、国税庁の一次ソースをもとに整理します。

「1ヶ月以内に出さないと」と焦っている人へ。実は期限、そこではありません。

開業届はいつまでに出すのか

「開業から1ヶ月以内」と書いている記事をよく見かけますが、根拠となる所得税法第229条(開業等の届出)はこう定めています。

居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し(中略)た場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない。

国税庁の手続案内も、届出書の様式に付いている「書き方」も同じで、期限はその年分の確定申告期限までです。すでに数ヶ月経っていても、あわてる必要はありません。

なお、所得税法の罰則の章(第238条〜243条)には、開業届の提出に関する罰則は挙げられていません。ただし確定申告の義務は開業届とは別に発生します。

そもそもどこからが事業なのか

第229条の対象は「事業所得……を生ずべき事業」を開始した人です。AI副業の場合にまず気になるのは「AIに作らせたものでも、自分の事業なのか」という点だと思いますが、判定の基準にAI利用の有無は挙げられていません。国税庁の所得税基本通達(35-2の注書き)が示す軸はこうです。

事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。 なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(中略)に該当することに留意する。

見られるのは活動の実態と、帳簿を付けて保存しているかです。道具が生成AIかカメラかは問われていません。継続的に受注・納品・販売して毎月収益が入っているなら事業として扱う余地が出てきますし、その場合は帳簿が前提になります。単発の少額収入だけなら雑所得にとどまる可能性が高くなります。迷う場合は税務署に確認してください。

収入源が複数でも届出は1枚

生成AIの副業は、収入源が自然と複数になります。クラウドソーシングでの記事納品、スキルマーケットでのイラスト受注、ストックサイトの販売収益、というように。

開業届は事業ごとではなく人ごとの届出なので、これらをまとめて1枚で届け出られます。様式の「事業の概要」欄は「できるだけ具体的に記載します」とされているので、実態をそのまま書きます。

事業の概要欄の書き方(複数の収入源をまとめる例)
  1. 1

    何をしているかを並べる

    例: 生成AIを利用したコンテンツの制作・販売(記事作成、イラスト制作、ストックイラスト販売)

  2. 2

    職業欄は代表するものを書く

    職業欄の書き方と個人事業税との関係は、次の記事で詳しく扱います。

  3. 3

    あとから収入源が増えても出し直しは不要

    概要欄は開業時点の実態でよく、事業内容の追加のたびに届出をやり直す仕組みではありません。

様式の記載例ではなく、書き方の考え方を示すものです。実態に合わせて書いてください。

主な記載欄は、提出先の税務署・マイナンバー・氏名・職業と屋号・納税地・届出の区分(開業に1)・所得の種類(事業所得)・開業日・事業の概要・給与支払の状況です。提出時は本人確認書類の提示または写しの添付が必要で、控えには個人番号を記載しない注意書きがあります。

青色申告承認申請書は別の時計で動く

開業届と同時に検討したいのが青色申告の承認申請です。提出時期は国税庁の案内でこう定められています。

青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで(その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始等の日(非居住者の場合には事業を国内において開始した日)から2月以内。)に提出してください。

2つの期限は別の時計で動く

開業した日

届出書に書く開業・廃業等日

開業日から2ヶ月以内

青色申告承認申請書の期限(1月16日以降に開業した場合)

その年分の確定申告期限

開業届の期限

開業届だけ先延ばしにしていると、青色申告承認申請の期限のほうが先に来ます。

青色申告にすると、要件に応じて55万円・65万円・10万円の青色申告特別控除(タックスアンサーNo.2072)が使えます。AI副業は経費が少なめになりやすい分、控除で課税所得を下げられる価値が相対的に大きい働き方です。

まとめ

  • 期限は「開業から1ヶ月」ではなくその年分の確定申告期限まで(所得税法229条)
  • 事業かどうかの判定軸は活動の実態と帳簿の保存。AIを使っているかどうかは基準に挙げられていない
  • 収入源が複数でも開業届は1枚。事業の概要欄に実態をまとめて書く
  • 青色申告承認申請は開業日から2ヶ月という別の時計で動く。開業届とセットで検討する

次は、多くの人の手が止まる開業届の「職業欄」に何と書くかと、いくらから確定申告が必要かです。