開業届はほとんどの欄が迷わず書けますが、「職業」欄で手が止まります。生成AIを使った副業には、まだ定着した職業名がないからです。

先に結論を書くと、職業欄に決まった書き方はなく、実態が伝わればよい。ただし、この欄は個人事業税の業種判定の材料になるので、何がどう影響するかは知ってから書くべきです。順に整理します。

職業欄に決まった書き方はない

開業届の様式に付属する国税庁の「書き方」を確認すると、氏名や納税地には記載の指示がある一方、職業欄の書き方は指定されていません。自由記載です。

「正式な職業名リスト」のようなものから選ぶ欄ではないので、実態が伝わる言葉で書けば足ります。

生成AI副業の場合の候補

実態に応じて、たとえば次のような書き方が考えられます。

職業欄の候補(実態から選ぶ)
  • 記事・文章の納品が中心

    ライター、コンテンツ制作業

  • イラスト・画像の受注、ストック販売が中心

    イラスト制作業、デザイン業

  • AI活用の助言・導入支援が中心

    コンサルタント業

  • 複数を並行していて決めきれない

    コンテンツ制作業などの広い言葉

    事業の概要欄で実態を補足すれば伝わります。

どれが正解という欄ではありません。複数の収入源がある場合は、中心になっているものを書きます。

「AI絵師」「プロンプトエンジニア」のような新しい言葉で書くこと自体は禁止されていませんが、この欄は役所が実態を把握するための欄です。判定する側が業種を特定しやすい一般的な言葉のほうが、実務上は無難です。

職業欄は個人事業税につながっている

職業欄が実質的に意味を持つのは、都道府県が課税する個人事業税の業種判定です。個人事業税は、地方税法で定められた法定業種に当たる事業に対してかかります。東京都主税局の案内はこうです。

個人の方が営む事業のうち、地方税法等で定められた事業(法定業種)に対してかかる税金です。現在、法定業種は70の業種があり、ほとんどの事業が該当します。

ここで生成AI副業に関わる事実を、同じページの法定業種の一覧から拾うと:

  • デザイン業は第3種事業(税率5%)に明記されている
  • コンサルタント業も第3種事業に明記されている
  • 「文筆業」は70業種の列挙に見当たらない

つまり、同じ「生成AIで作って納品する」副業でも、実態がイラスト・デザイン寄りなら法定業種に当たる可能性が高く、文章の執筆寄りなら列挙にない、という非対称があります。ライター系の副業で個人事業税の通知が来ない、という話の背景はここです。

ただし注意してください。判定は職業欄の名称ではなく事業の実態で行われます。「職業欄を文筆業と書けば課税されない」という話ではありませんし、実態がデザインや請負に当たると判定されれば課税対象になりえます。個別の判定は、お住まいの都道府県税事務所に確認してください。

事業主控除290万円がある

法定業種に当たる場合でも、個人事業税には事業主控除(年290万円)があります(地方税法72条の49の14)。所得が290万円以下なら個人事業税はかかりません。副業の規模のうちは、実際には発生しないことが多い税金です。

なお、都道府県によっては事業開始の際に事業開始等申告書の提出が定められています(東京都は事業開始の日から15日以内)。国の開業届とは別の書類です。お住まいの都道府県のサイトで確認してください。

まとめ

  • 職業欄に決まった書き方はない。実態が伝わる一般的な言葉で書く
  • 記事系はライター・コンテンツ制作業、イラスト系はイラスト制作業・デザイン業、助言系はコンサルタント業が候補
  • 職業欄は個人事業税の業種判定の材料。デザイン業・コンサルタント業は法定業種(第3種・5%)に明記、文筆業は列挙に見当たらない、という非対称がある
  • ただし判定は名称ではなく実態。最終判断は都道府県税事務所へ
  • 法定業種でも事業主控除290万円があり、副業規模では発生しないことが多い

開業届そのものの出し方・期限は、親記事生成AI副業の開業届の出し方で整理しています。