編集ソフトの比較記事はたくさんありますが、切り抜きに限っては、一般的な「動画編集ソフト人気ランキング」がそのまま役に立ちません。切り抜きの編集は作業の内訳が特殊だからです。

この記事では、順位は付けません。切り抜きの作業の実態から、自分で選ぶための基準を5つに絞ります。最後に、私が実際に無料ツールから有料ソフトへ乗り換えたときの判断も載せます。

何時間もかかるのはカッコいいエフェクトではなく、テロップです。そこから逆算しましょう。

切り抜きの編集は3つの作業でできている

切り抜き動画の制作は、実際にはほぼこの3つです。

切り抜き編集の作業の内訳
  1. 1

    カット

    元配信から使う部分を切り出し、間を詰める。テンポを決める作業。

  2. 2

    テロップ

    発言のほぼ全文に字幕を付ける。切り抜き編集の作業時間の大半はここ。

  3. 3

    サムネイル

    クリックされるかを決める1枚。編集ソフトとは別のツールを使うことも多い。

映画的なエフェクトやカラーグレーディングは、切り抜きではほぼ使いません。多機能さより、この3つが速いことが効きます。

つまりツール選びの問いは「多機能か」ではなく、「この3つ、特にテロップがどれだけ速く終わるか」です。以下の基準はすべてここから逆算しています。

基準1 テロップの自動化があるか

切り抜きは発言に字幕を付け続ける形式なので、テロップを1枚ずつ手で打つと、10分の動画でも数時間かかります。音声認識でテロップの下書きを自動生成できるかが、作業時間を最も大きく左右します。

この機能は珍しいものではなくなっています。たとえばVrewは「音声認識機能による字幕の自動生成」を最初から主機能にしていますし、Adobe Premiere Proにも「音声のテキスト化」からキャプションを自動作成する機能があります(いずれも公式サイト・公式ヘルプに記載。出典は記事末尾)。

ただし、自動生成は手直しが前提です。Vrew自身の説明も「音声分析で作られた字幕をちょっとだけ修正すると」完成、という書き方です。配信者の固有名詞・ネットスラング・早口は誤認識が出ます。「自動生成→一括で見直す」の流れが快適かどうかまで、体験版で確かめてください。

基準2 無料で始めて、伸びたら移れるか

収益化の条件(登録者500人・1,000人の2段階)に届くまで、切り抜きの収入はゼロです。無収入の期間に月額課金を積むのは、構造的に分が悪いやり方です。

  • まず無料で使えるツールで始める。無料プランを持つツール、無料の編集ソフトのどちらでもかまいません
  • 続けるうちに「テロップの物量に耐えられない」「フォントや装飾が足りない」といった具体的な不満が出てきたら、それを解消できる有料ソフトに移る

この順番だと、お金を払う理由が明確になってから払うことになります。逆に、最初に高機能なソフトを契約しても、切り抜きが続くかどうか自体がまだ分かりません。

基準3 商用利用とライセンスを確認する

収益化を目指す以上、動画は営利利用です。2つの階層で確認が要ります。

ライセンスで確認する2つの階層
  • ツール自体は商用利用できるか

    利用規約・プランの記載を確認

    無料プランは個人利用のみ、という構成のツールもあります。

  • 付属素材(BGM・画像・テンプレート・フォント)は商用利用できるか

    素材ごとのライセンスを確認

    ツール本体が商用可でも、同梱素材が別条件のことがあります。収益化後に差し替えるのは手間なので、最初から商用可の素材だけで組むのが安全です。

規約は変わります。実際に使う前に、そのツールの最新の利用規約・料金ページで確認してください。

なお、YouTubeの収益化審査やContent IDの申し立ての観点は、ツールではなく素材の権利の問題です。ここで手を抜くと、収益そのものが取り消される場合があります(このガイドの「収益化の落とし穴」の記事で整理しています)。

基準4 いまのPCで動くか

動画編集はPCの性能に強く依存します。ハイスペックなソフトを選んでも、書き出しに毎回30分かかるなら投稿頻度が落ち、収益化の条件(直近90日に公開動画3本以上)にも響きます。

  • 候補のツールは必ず体験版・無料版を自分のPCで動かす。快適かどうかはスペック表より実際の挙動で判断する
  • 切り抜きはフルHDで十分成立するので、4K前提の重い環境を組む必要はありません
  • PCの買い替えまで検討する場合、その費用の経費の扱いは手続きガイドの経費の記事で整理しています

基準5 公開までの手数が少ないか

切り抜きは1本の大作より、投稿の継続で伸ばす形式です。「書き出し→サムネ設定→アップロード」の1周にかかる手数が、そのまま継続のしやすさになります。書き出しプリセットの保存、YouTubeへの直接アップロード機能、テロップスタイルの使い回しなど、2本目以降が速くなる仕組みがあるかを見てください。

実例 無料で始めて、理由ができてから移った

私自身の経緯です(2021年時点の判断で、各ツールの現在の仕様・料金は公式サイトで確認してください)。

最初は無料のVrewで始めました。理由は基準1そのもので、AIがテロップの下書きを自動で付けてくれるからです。切り抜きのような字幕量の多い動画とは相性がよく、1本目を出すまでの障壁がいちばん低い選択でした。

その後、Adobe Premiere Proに移行しました。当時の記録に残っている理由は4つです。

  • 自動でテロップが付けられる(移行しても基準1は落とさない)
  • フォントの選択肢と装飾の自由度が大きい
  • クラウドストレージが使える
  • 書き出しからYouTubeへのアップロードまでの手数が少ない

つまり、基準1を維持したまま、基準5と表現の自由度のために移行したという判断でした。サムネイルは別途Photoshopで作っていました。この経緯の全体は体験談の記事に書いています。

まとめ

  • 切り抜き編集の実態はカット・テロップ・サムネの3つ。多機能さではなく、この3つの速さで選ぶ
  • 最重要はテロップの自動生成。ただし手直し前提なので、直しやすさまで体験版で確認する
  • 無料で始めて、具体的な不満が出てから有料に移る。収益化前に固定費を積まない
  • 商用利用の可否はツール本体と同梱素材の2階層で確認する
  • 体験版を自分のPCで動かしてから決める。公開までの手数の少なさが継続を決める

ツールの仕様・料金・規約は変わります。この記事は選び方の枠組みで、最新の条件は必ず各ツールの公式サイトで確認してください。