切り抜きチャンネルの最初の関門は、元配信者の許諾です。ここを飛ばして編集を覚えても、公開できる動画にはなりません。
ただし「許可を取る」の中身は、相手によってまったく違います。この記事では、確認した公式ガイドラインの原文を引きながら、許諾の取り方を3つのパターンに分けて整理します。
「誰の配信を切り抜くか」を決めると、やることが決まります。まずどのパターンかを確認しましょう。
許諾には3つのパターンがある
事務所が切り抜きのガイドラインを公開している
原文を読んで従う
ホロライブ・にじさんじなど。ガイドラインが手続きそのものです。
個人配信者で、ガイドラインが無い
直接確認する
確認する項目は後述のチェックリストで。
許可の記載が見つからない・返事がない
出さない
「黙認されているように見える」は許可ではありません。
どのパターンでも、メンバーシップ限定などの有料コンテンツは対象外です(後述)。
パターン1 事務所がガイドラインを公開している
ホロライブの例 — 切り抜き専用のガイドラインがある
カバー株式会社(ホロライブプロダクション)は、二次創作の全般ガイドラインとは別に、切り抜き動画に関するガイドラインを公開しています。収益化については、こう明記されています。
切り抜き動画は、上記「お願い」を遵守いただけることに加えて、投稿プラットフォームの利用規約、元動画に含まれる第三者コンテンツ権利者の利用規約等その他関係する規約に抵触しないことを前提に、YouTube、ニコニコ動画その他の動画共有サイトが提供するパートナープログラムやクリエイタープログラム等を活用した広告収益を含むいわゆる収益化機能をご利用頂いて差し支えありません。
つまり、条件を守れば収益化まで含めて認められています。その条件(「お願い」)の主なものは次のとおりです。
概要欄の冒頭に元動画のURLとタイトルを明記する
チャンネルを登録フォームから登録する
登録すると、削除手続きの前に削除依頼の連絡を受けられるようになる、と案内されています。
元動画のアーカイブ公開より前に切り抜きを投稿する
Content ID等へ自己の著作物として登録する
自動識別機能への登録は禁止と明記されています。
メンバーシップ限定動画・チケット制ライブなど有料コンテンツを切り抜く
特別に許可がなされていない限り禁止です。
このほか全般ガイドラインも適用されます。実際に始める前に必ず原文を確認してください(出典は記事末尾)。
登録制度には実務上の意味があります。ガイドラインによれば、登録した連絡先には削除手続きの前に削除依頼が届き、削除依頼から7日以内に対応すればプラットフォームのペナルティを回避できる、という流れが用意されています。逆に言えば、未登録だと予告なく削除手続きが進む可能性がある、ということです。
同じVTuber事務所でも書きぶりは違う — にじさんじの例
ANYCOLOR(にじさんじ)の二次創作ガイドラインにも切り抜きの条文がありますが、書かれ方はホロライブと同じではありません。まず、編集の仕方そのものに禁止事項が明文化されています。
公式ライバーの発言・映像・音声等の一部分をトリミングしたり、画像・文字・音声等を追加するなどして、意図的に次のような効果を生じさせようとする行為をすることは禁止します。 (1)公式ライバーの言動または配信内容に対して誤解を生じさせるよう誘導する行為 (2)誤情報または虚偽情報の流布に繋がる行為
サムネイルについても、「配信内容の本意とは離れた内容または刺激的な内容を含む文字もしくは画像を使用する行為も禁止します」とあります。釣りサムネ・切り取りによる印象操作は、規約違反として明文で禁じられているということです。
そして収益化について。ゲーム実況など第三者の著作物を含む配信の切り抜きは「収益化投稿の可否を含め、みなさまが自らの責任で権利者から許諾をとる必要がございます」とした上で、括弧書きでこう続きます。
なお、このことは、当社が独占的に著作権を有するコンテンツの二次創作作品の収益化投稿を許可することを意味するものではなく、当社が必要と判断した場合には、第8条第3項に基づき本コンテンツの利用の中止を求めることがございますので、その点もご留意ください。
確認した時点のガイドライン本文には、切り抜きの収益化投稿を一般に許可する記載は見当たりませんでした。「ガイドラインがある事務所=収益化してよい」ではない、というのがここでの教訓です。事務所ごとに、原文を読んで判断してください。個別の可否が読み取れない場合は、事務所へ問い合わせる対象です。
両社に共通していること
書きぶりは違っても、共通している線もあります。
- 有料コンテンツは切り抜けない。 ホロライブは「特別に許可がなされていない限り」禁止。にじさんじはメンバー限定動画等を適用対象外とした上で、無断転載には「法的措置を含めた厳正な対応を講じさせていただきます」と記載
- 第三者の権利は事務所の許可ではカバーされない。 両社とも、自社が権利を持たないコンテンツは当該権利者の規約に従うよう明記
- ガイドラインは変わる。 どちらも改定されます。この記事の引用は確認時点のもので、始める前に必ず原文の最新版を読んでください
パターン2 個人配信者には直接確認する
事務所に所属していない配信者の場合、ガイドラインの代わりになるのは本人との合意です。DMやメールなど、あとから読み返せる形で確認してください。配信中に口頭で「いいよ」と言われただけの状態は、時間が経つと双方の記憶で条件がずれます。
確認しておく項目は、事務所ガイドラインが定めている項目とほぼ同じです。ガイドラインが無い相手には、それを自分で聞く、と考えると漏れません。
- 1
切り抜きを作って公開してよいか
対象のチャンネル・配信の範囲も含めて。
- 2
収益化してよいか
広告収益を得ることへの合意は、公開の許可とは別の論点です。分配を求められる場合は条件も文面に。
- 3
クレジットと導線の指定
元動画URLの記載、チャンネル名の表記方法など、相手の希望を確認します。
- 4
やってはいけない編集の確認
切り抜いてほしくない話題、サムネイルのトーンなど。
- 5
取り消しの扱い
相手が「やっぱり消してほしい」となったときにどうするか。応じる姿勢を先に伝えておくと、許可は得やすくなります。
法的な契約書の体裁である必要はありませんが、合意の内容が文面で残る状態にしてください。条件が変わったときは、その時点でまた確認します。
許可が取れても残る2つの関門
許諾はスタート地点で、これだけでは収益化に到達しません。
- YouTubeの収益化審査。 元配信者の許可を得ていても「再利用されたコンテンツ」のポリシー違反になりうると、YouTube自身が明記しています(このガイドの「収益化の条件」の記事で原文つきで整理しています)
- 第三者の権利。 元配信にゲーム画面・楽曲・他人の動画が含まれていれば、その権利者の規約が別に効いてきます。両事務所のガイドラインも、この部分は自分で確認するよう明記しています
なお、切り抜きを事業として続けて収益が出はじめたら、開業届や確定申告という手続きの話が始まります。そちらはYouTube切り抜きチャンネルの始め方から順に読めるようにしてあります。
まとめ
- 許諾のパターンは3つ: 事務所のガイドラインに従う/個人配信者に直接確認する/確認できないなら出さない
- ホロライブは切り抜き専用ガイドラインがあり、条件つきで収益化を明示的に許可。概要欄への元動画URL明記・チャンネル登録制度・アーカイブ公開前の投稿禁止・Content ID登録禁止が主な条件
- にじさんじは誤解を生む編集と釣りサムネの禁止が明文化されており、収益化投稿については許可を意味しない旨の留保がある。「ガイドラインがある=収益化OK」ではない
- 両社とも有料コンテンツの切り抜きは不可、第三者の権利は自分で確認
- 個人配信者には、公開の可否・収益化の可否・クレジット・NG事項・取り消しの扱いを、文面が残る形で確認する
- ガイドラインは改定される。始める前・迷ったときは必ず原文の最新版を読む
この記事は法的助言ではありません。判断に迷う場合や、事業として大きく展開する場合は、弁護士など専門家への相談も検討してください。

