同人活動の職業欄が書きにくいのは、ひとつのサークル活動の中に複数の業種が混ざっているからです。漫画や小説を描く、表紙やイラストの仕事も受ける、イベントでグッズも頒布する——このどれを職業欄に書くかで手が止まります。
先に結論を書くと、職業欄に決まった書き方はなく、実態が伝わればよい。ただしこの欄の先には個人事業税の業種判定があり、同人はその判定で列挙のある側と無い側をまたぐ働き方です。順に整理します。
決まった書き方はない
開業届の様式に付属する国税庁の「書き方」を確認すると、氏名や納税地には記載の指示がある一方、職業欄の書き方は指定されていません。自由記載です。「正式な職業名リスト」から選ぶ欄ではないので、実態が伝わる言葉で書けば足ります。
同人の場合の候補
漫画・小説の制作頒布が中心
漫画家、文筆業・著述業
イラストの制作・頒布や、表紙などの受注が中心
イラストレーター、イラスト制作業・デザイン業
デザイン業は法定業種(第3種事業・税率5%)に明記されています。
アクリルグッズ等の製作販売も大きい
主な方を職業欄に、概要欄で「同人誌・グッズの制作販売」と補足
物品の販売は法定業種の物品販売業(第1種事業・税率5%)に整理されえます。
どれが正解という欄ではありません。複数が混ざる場合は、中心になっているものを書きます。
「同人作家」と書くことが禁止されているわけではありませんが、この欄は役所が実態を把握するための欄です。判定する側が業種を特定しやすい一般的な言葉のほうが、実務上は無難です。活動の中身は「事業の概要」欄に「同人誌の制作・頒布およびイラスト制作の受託」のようにまとめて書けます。
個人事業税では同人は3つの顔を持つ
職業欄が実質的に意味を持つのは、都道府県が課税する個人事業税の業種判定です。東京都主税局の法定業種の一覧(70業種)に同人活動の要素を当てると、こう分かれます。
デザイン業(イラスト制作・表紙の受注など) — 第3種事業(税率5%)
物品販売業(グッズの製作販売など) — 第1種事業(税率5%)
出版業 — 第1種事業(税率5%)
漫画・小説の執筆(文筆業・著述業) — 一覧に見当たらない
「見当たらない」は、掲載されている70業種の一覧に項目として無いという意味です。課税されないことを保証するものではありません。
つまり同じサークル活動でも、イラストやデザインの受注は列挙のある側(デザイン業・第3種)、グッズの製作販売も列挙のある側(物品販売業・第1種)、漫画・小説を描いて頒布する部分は著述の側で一覧に見当たらない、という3つの顔を持ちます。
活動が混ざっている場合にどこで線を引くかを一般化して示した公的な資料は見つけられませんでした。書いていないことを推測で埋めるべきところではないので、この記事では「同人は判定がまたがる位置にある」ところまでで止めます。判定は住んでいる都道府県の税事務所が行うので、収入が育ってきた段階で確認してください。
職業欄の名称で税額が決まるわけではない
大事な前提です。判定は職業欄に書いた名称ではなく、事業の実態で行われます。「文筆業と書けば個人事業税がかからない」という話ではなく、「デザイン業と書いたから課税される」わけでもありません。職業欄は実態を伝える材料のひとつで、名称で税額を選べる欄ではありません。
事業主控除290万円がある
法定業種に当たる場合でも、個人事業税には事業主控除(年290万円)があります。事業の所得が290万円以下なら発生しません。同人の収入がその規模に近づくまでは、そもそもこの税金は出てきません。
あわせて、個人事業税の計算では青色申告特別控除額が加算されます。東京都主税局のページに「個人の事業税には青色申告特別控除の適用はありませんので、所得金額に加算します」と明記されています。所得税で65万円を控除していても、個人事業税ではその分が戻される、ということです。
なお、国の開業届とは別に、都道府県への事業開始等申告書の提出が定められています(東京都は事業開始から15日以内・窓口は都道府県税事務所)。期限が開業届より短いので、出す場合は先に確認してください。
まとめ
- 職業欄に決まった書き方はない。漫画・小説中心なら漫画家・文筆業、イラスト中心ならイラスト制作業・デザイン業が候補
- 法定業種の一覧ではデザイン業(第3種5%)と物品販売業(第1種5%)はあり、文筆業・著述業は見当たらない。同人はこの境目をまたぐ
- 判定は名称ではなく実態。混在時の線引きを一般化した公的資料は確認できなかったので、最終判断は都道府県税事務所へ
- 事業主控除290万円があるため、副業規模では発生しないことが多い。青色申告特別控除は個人事業税では加算される
開業届そのものを出すかどうか(趣味と事業の境目)は、親記事同人活動の収入で開業届を出すべきかで整理しています。
