副業の収益が確定申告の対象になると分かったとき、次に出てくるのが「会計ソフトは要るのか」です。答えは義務ではないが、狙う控除によっては事実上必要になるです。

このページは職業をまたいで共通する部分だけを扱います。職業ごとの難所(在庫・外貨・源泉徴収・アプリ内の明細など)は、それぞれの職業の記事にあります。

白色でも記帳と保存は必要

まず、帳簿そのものは会計ソフトの有無に関係なく必要です。開業届の様式に付いている国税庁の「書き方」にはこう書かれています。

事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方(所得税及び復興特別所得税の申告の必要がない方を含みます。)は、記帳と帳簿書類の保存が必要となっております。

保存の対象について、国税庁の案内はこう定めています。

収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、取引に伴って作成した帳簿や受け取った請求書・領収書などの書類を納税者の住所地や事業所などの所在地に整理して保存する必要があります。

「青色申告にしないから帳簿はいらない」ということにはなりません。

帳簿に何を書くのか

「帳簿が必要」と言われても、何を書けばよいのかが分からないと始まりません。国税庁の案内はこう定めています。

売上げなどの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等を帳簿に記載します。

必要なのは日付・相手・金額の3点が残ることで、様式が指定されているわけではありません。

1件ずつ書かなくてよい(簡易な方法)

副業の規模で現実的に効くのがここです。同じ案内に続きがあります。

記帳に当たっては、一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。

取引を1件ずつ起こす必要はなく、まとめられる単位は「日々の合計」です。少額多数の売上(フリマアプリ・イベント頒布・投げ銭など)がある働き方では、これを知っているかで作業量が変わります。

ただし、まとめ方を知っていてもどこかに元の記録は残しておくことになります。プラットフォームの販売履歴は保存期間が決まっているものがあるので、月ごとに落としておくのが安全です。

帳簿と書類の保存期間

作ったあとの保存期間も案内に表で示されています。

保存が必要なもの保存期間
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)7年
業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)5年
決算に関して作成した棚卸表その他の書類5年
業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類5年

法定帳簿だけ7年で、ほかは5年という形です。ソフトを選ぶときは、やめたあとにデータを取り出せるか(エクスポートできるか)も見ておくと、この期間に困りません。

雑所得でも書類の保存義務が出てくる

もう1つ、副業に直接関わる定めがあります。

令和4年以降、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円超の方は、その業務に係る現金預金取引等関係書類を5年間保存する必要があります。

事業所得ではなく雑所得でも、規模が一定を超えると書類の保存義務が出てくるということです。同じ案内は、現金預金取引等関係書類を「現金の収受・払出し、預貯金の預入・引出しに際して作成されたもの」と説明しています。

55万円65万円控除の要件はソフト選びに直結する

国税庁のタックスアンサー(No.2072)によると、青色申告特別控除は3段階です。

控除額主な要件
10万円55万円・65万円の要件に該当しない青色申告者
55万円事業所得等を生ずべき事業/複式簿記での記帳/貸借対照表・損益計算書を添付して期限内申告
65万円55万円の要件に加えて、e-Taxで申告するか、仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件を満たして保存

ここから、ソフトに求める機能が決まります。

  • 複式簿記に対応しているか(55万円以上を狙うなら必須)
  • 貸借対照表・損益計算書を作れるか
  • e-Taxでの申告に対応しているか(65万円を狙う場合の現実的な手段)

逆に言うと、10万円控除でよい、あるいは白色申告なら、要件はここまで厳しくありません。自分がどの控除を狙うかが決まらないと、ソフトの要否も決まらないということです。

制度の要件に「会計ソフト」という言葉はありません。複式簿記と貸借対照表を手作業でやるのが現実的でない、というだけの話です。

選ぶときに効く5つの基準

そのうえで、実際に使う立場で効く基準を挙げます。

1. 銀行口座・クレジットカードと連携できるか。 一番大変なのは日々の記帳です。明細を自動取得できるかどうかで作業量が大きく変わります。

2. クラウド型かインストール型か。 継続課金で常に最新版になるクラウド型と、買い切りに近いインストール型があります。制度改正への追従、複数端末での利用、費用の形が変わります。

3. e-Tax対応。 65万円控除を狙うなら実質的に必要です。税務署に行かずに完結するかどうかも変わります。

4. 開業届も作れるか。 これから開業届を出す人は、開業届と青色申告承認申請をまとめて作れるサービスを使うと手数が減ります。ただし開業のサービスと日々の記帳のソフトは別でも構いません。

5. 無料で試せるか。 多くのサービスに無料プランや試用期間があります。実際の画面を触って、自分が続けられるかを確かめてから決めるのが確実です。

選び方の手順

  1. 青色申告で55万円以上を狙うかを決める
  2. 銀行・カードの明細取込が自分の販路・決済に対応しているか確認する
  3. プラットフォーム側の明細(売上レポート・報酬明細)の保存はソフトの外で毎月やる
  4. 無料試用に1ヶ月分の実データを入れて手間を確かめる

マネーフォワード クラウド確定申告ADは、公式ページによれば銀行やクレジットカードの明細を自動で取り込め、青色・白色の両方とe-Taxに対応しています。このサイトの運営者が自分の副業の申告で使っているのもこのソフトです。開業届のほうはマネーフォワード クラウド開業届ADのように、質問に答えると書類を作れるサービスがあります。

一番おすすめを書かない理由

会計ソフトの比較記事は無数にありますが、このサイトでは順位を付けません。理由は2つです。

実際に使っていない製品の使い勝手を書けないから。 このサイトは「公式サイトで確認できた内容と、実際に使った経験だけを書く」方針で運営しています。使っていないソフトを使い込んだように書くことはしません。

最適解が人によって違うから。 狙う控除額、白色か青色か、取引の量、カードを使うか現金が多いか、外貨があるか。これらで答えが変わります。

料金・機能・キャンペーンは変わります。各社の公式サイトで最新の内容を確認し、無料で試せる範囲で触ってから決めてください。

職業ごとの難所はそれぞれの記事へ

まとめ

  • 帳簿の記帳と保存は白色申告でも必要(国税庁の案内)
  • 会計ソフトが実質必要になるのは青色申告で55万円・65万円控除を狙う場合(複式簿記が要件・No.2072)
  • 65万円にはe-Taxでの申告か優良な電子帳簿の要件を満たす保存が必要
  • 基準は口座・カード連携/クラウドかインストールか/e-Tax対応/開業届も作れるか/無料で試せるか
  • 順位ではなく要件で絞って無料試用で確かめる