印税が毎月入るようになると、次に気になるのが「いくらから確定申告が必要なのか」です。

Kindle出版の場合、ここに他の副業では出てこない2つのねじれが乗ります。入金が売上の約60日後に来ることと、米国で税金が引かれていることです。基準そのものと合わせて、順に整理します。

  • 会社員の副業としてやっているなら、印税を含む給与以外の所得が年間20万円を超えたら、所得税の確定申告が必要
  • 専業(給与なし)なら、所得の合計が所得控除の合計を超えて税額が出るなら必要。控除が基礎控除だけの場合、令和7年分以後は所得95万円がひとつの目安
  • 所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告は別に必要
自分がどれに当たるか

Kindleの印税について、確定申告は必要か

  • 会社員で、給与以外の所得の合計が年間20万円を超える

    所得税の確定申告が必要

  • 会社員で、給与以外の所得の合計が20万円以下

    所得税は原則不要

    ただし市区町村への住民税の申告は別に必要です。

  • 専業で、所得の合計が所得控除の合計を超えて税額が出る

    所得税の確定申告が必要

    控除が基礎控除だけなら、令和7年分以後は所得95万円がひとつの目安です。

いずれも本文で引用した国税庁・自治体の案内に基づきます。判定に使うのは「入金額」ではなく「所得(収入 − 必要経費)」です。

まず「収入」と「所得」を区別する

基準になる金額はすべて「収入」ではなく「所得」=収入から必要経費を引いた残りです。

印税が年間28万円入っていても、表紙デザインの外注に5万円、資料の書籍代に4万円かけていれば、所得は19万円です。何が経費になるかは経費にできるもの一覧で扱いますが、この区別を押さえておかないと以下の基準をすべて読み違えます。

会社員の副業なら「所得20万円超」

会社勤めで年末調整を受けている人の基準は、国税庁のタックスアンサー(No.1900)にこう書かれています。

給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人

合計額」と書かれているのが重要です。Kindleの印税だけで20万円を超えていなくても、ブログの広告収入や他の副業と合わせて超えるなら申告が必要になります。印税単独で判定するものではありません。

なお、この案内には「確定申告をすれば税金が還付される人は除きます」という前提が付いています。給与収入が2,000万円を超える人や、給与を2か所以上から受けている人は別の基準があるので、当てはまる場合は同ページで確認してください。

専業なら「所得控除を超えて税額が出るか」

給与がなく執筆が収入の中心の場合、基準は国税庁のタックスアンサー(No.2020)のこの原則です。

その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人は、確定申告をする必要があります

誰にでも適用される所得控除が基礎控除です。ここは令和7年度の税制改正で金額が変わりました(No.1199)。

合計所得金額令和6年分以前令和7年分以後
132万円以下48万円95万円

令和7年分の上記規定は、令和7年12月1日に施行されます。

「所得48万円以下なら申告不要」と書いてある記事をいまでも多く見かけますが、それは令和6年分以前の金額です。令和7年分以後は、ほかに所得や控除がなければ、所得95万円以下なら基礎控除だけで所得を上回るため、所得税の確定申告義務は生じない計算になります(所得が132万円を超える場合は控除額が段階的に変わるので、No.1199の表で確認してください)。

所得税の申告が不要でも、住民税の申告は要る

20万円ルールは所得税(国税)の話で、住民税(市区町村・都道府県税)には同じ仕組みがありません。横浜市の案内にはこう明記されています。

ここがいちばん見落とされます。所得税と住民税は、別々の手続きです。

合計額が20万円以下の場合には、原則確定申告は不要ですが、市民税・県民税の申告は必要となります。

印税の所得が20万円以下で確定申告をしない場合でも、お住まいの市区町村への住民税の申告は別に必要です。様式や手続きは自治体ごとに異なるので、お住まいの市区町村のサイトで「住民税の申告」を確認してください。住民税がどう会社に通知されるかという仕組みの話は、会社に知られるのかで扱っています。

入金は売上の約60日後に来る

ここからがKindle出版の固有事情です。KDPの支払いサイクルは公式ヘルプでこう説明されています。

特定の月に最低売上金額を満たすと、その月の末日から約 60 日後にロイヤリティが支払われます

つまり12月に売れた分の印税は、翌年2月末ごろの入金になります。さらに、最低支払い金額に達しない月は支払いが行われず、残高として繰り越されます。「今年いくら入金されたか」と「今年いくら売れたか」は一致しません。

では、どちらで申告するのか。国税庁のタックスアンサー(No.2200)が示す原則はこうです。

その年において収入すべき金額は、年末までに現実に金銭等を受領していなくとも、「収入すべき権利の確定した金額」になります。

その年の12月20日に商品を売って、その代金は年を越して翌年1月10日に受け取ったような場合には、商品を売ったその年の収入になる

入金日で数えると年がずれる

12月 — 売れる

KDPのレポートに売上が計上される

翌年2月末ごろ — 入金

「その月の末日から約60日後」(KDP公式)

申告

入金額をそのまま並べると年がずれる。権利確定主義で判断する

計上時期は「それぞれの取引の内容、性質、契約の取決め、慣習などによって判定します」(No.2200)。最終的な扱いは税務署に確認してください。

ただし、印税のように著作権を使わせて得る収入の計上時期を、いつと判定するかは取引の内容や契約の取決めで決まると同ページに書かれています。KDPの契約についてこれを一般化して示した公的資料は確認できませんでした。ここは推測で埋めるべきところではないので、確定申告の際にKDPのレポート(売上月ベース)と入金明細の両方を用意して、税務署に確認してください。

実務的にやっておくべきことははっきりしています。KDPのレポートを月ごとにダウンロードして残すことです。入金明細だけでは、どの月の売上に対応する入金なのかが後から追えなくなります。

米国で引かれた税金はどうなるのか

もうひとつのねじれです。KDPの公式ヘルプはこう説明しています。

Amazon.com での電子書籍の売り上げと、Amazon.com、Amazon.co.jp、Amazon.com.au、および Amazon.ca での紙書籍の売り上げに対するロイヤリティの支払いには、KDP セレクト グローバル基金からの支払いを含む 30% の米国の源泉徴収税が適用されます。

そして軽減の道も案内されています。

永住権をお持ちの国が米国と租税条約を締結している場合は、米国の源泉徴収税の軽減措置を受けられる可能性があります。

必要な番号については「米国の TIN をお持ちの場合は、税務プロファイルの提出時に番号をご記入ください。米国の TIN を持っていない場合は、居住国の税務機関から発行された納税者番号を入力することもできます」とされています。またW-8フォームには期限があり、「お客様の W-8 は、署名された日付から 3 年後の最終日に期限切れになります」、期限切れになると「源泉徴収税率はデフォルトの 30% に戻ります」と明記されています。何年か前に手続きしたまま放置している人は、ここを確認する価値があります。

米国の源泉徴収税まわりでやること
  1. 1

    KDPの税務プロファイル(W-8)を提出しているか確認する

    未提出だと既定の30%が適用されると案内されています。

  2. 2

    W-8の有効期限を確認する

    署名日から3年後の末日

    期限切れで既定の30%に戻ります。

  3. 3

    明細で実際に引かれている額を確認する

    確定申告で使うのは、引かれる前の総額と、引かれた税額の両方です。

  4. 4

    外国税額控除を検討する

    外国所得税を納めた場合は、確定申告で控除を検討できます(No.1240)。

いずれもKDP公式ヘルプと国税庁の案内に基づきます。自分に適用される税率は、KDPの税務プロファイルとロイヤリティ明細で確認してください。

日本側の扱いは、国税庁のタックスアンサー(No.1240)の外国税額控除です。

居住者が、その年において外国の法令により所得税に相当する租税を納付することとなる場合には、次の算式で計算した控除限度額を限度として、その外国所得税額をその年分の所得税額から差し引くことができます

控除限度額は「その年分の所得税額 × その年分の調整国外所得金額 / その年分の所得総額」で計算します。申告時には「外国税額控除に関する明細書(居住者用)」や、外国所得税を課されたことを証する書類の添付が必要です。

大事な前提を2つ書いておきます。

  1. 収入として申告するのは、米国で引かれる前の総額です。手元に入った額だけを収入にすると、収入も税額も過少になります
  2. 米国の源泉徴収税は日本の所得税の前払いではありません。日本の確定申告は別に必要で、外国税額控除は「申告した上で控除を受ける」仕組みです

計算も添付書類も個別性が高いので、実際に引かれている場合は税務署か税理士に確認してください。

印税が1,000万円に近づいたら消費税の話が出てくる

先の話ですが、書いておきます。消費税は基準期間(個人事業者はその年の前々年)の課税売上高が1,000万円以下なら、原則として納税義務が免除されます(No.6501)。前年の1月1日から6月30日までの特定期間の課税売上高が1,000万円を超える場合は免除されません。また「適格請求書発行事業者の登録を受けている場合には、納税義務は免除されません」。

ただし、KDPからのロイヤリティが消費税の課税売上に入るかどうかは国外との取引の判定が絡む論点で、一般化して示せる資料は確認できませんでした。この規模に近づいたら税理士に相談する話として置いておいてください。

まとめ

  • 会社員の副業なら給与以外の所得の合計が20万円超で申告が必要(No.1900・印税単独ではなく合計)
  • 専業なら所得控除を超えて税額が出るかどうか。基礎控除だけなら令和7年分以後は所得95万円が目安(No.1199)
  • 所得税の申告が不要でも住民税の申告は別に必要
  • KDPの入金は売上月の末日から約60日後。入金額を並べると年がずれるので、月ごとのレポートを残す
  • 米国で引かれる前の総額が収入。引かれた税は外国税額控除を検討する(No.1240)。W-8は3年で期限切れ

次は、判定の分母を左右するKindle出版で経費にできるもの一覧と、会社に知られるのかです。