数年前に、KDPで実用書・ノウハウ系の電子書籍を複数冊出していたときの記録です。いまのKDPは画面や手続きの流れが変わっている可能性があるので、「数年前はこうだった」という一人の記録として読んでください。
先に全体の印象を書くと、出版そのものより、お金まわりの「見たことのない仕組み」に戸惑いました。米国の税務手続き、遅れてくる入金。どちらも最初に知っていれば身構えなくて済んだ話です。
戸惑った順に。同じところで止まっている人の役に立てば。
W-8はマイナンバーで済んだ
出版の登録を進めると、途中で税務情報の入力(いわゆる税務インタビュー・W-8の提出)を求められました。「米国の税務書類」と聞いて身構えましたが、実際にやってみるとKDPの画面の質問に答えていくだけで、書類を郵送することも、米国の納税者番号(TIN)を取りにいくこともありませんでした。
納税者番号の欄には、日本のマイナンバーを入力しました。KDPの公式ヘルプにも「米国の TIN を持っていない場合は、居住国の税務機関から発行された納税者番号を入力することもできます」とあります。
手続きが終わると、私の場合は源泉徴収の税率が0%になりました。これは私に特別なことが起きたわけではなく、財務省の資料によれば日米租税条約では使用料(ロイヤリティ)の源泉地国課税が免税とされているので、条約どおりの結果です。逆に言うと、この手続きをしていなければ既定の30%が引かれていたことになります(KDP公式ヘルプの記載)。数分の入力でここが変わるので、Kindle出版でお金まわりの手続きをひとつだけ選ぶなら、間違いなくこれです。
ひとつ注意を足しておくと、当時の私は知りませんでしたが、KDPのヘルプにはW-8は署名日から3年後の末日で期限切れになり、切れると既定の30%に戻ると書かれています。昔手続きしたきりの人は、税務プロファイルを見直す価値があります。
手続き前
既定では30%の米国源泉徴収税が適用されるとKDPが案内
税務インタビューに回答
画面の質問に答えるだけ。納税者番号は日本のマイナンバーを入力
手続き後
税率0%(日米租税条約の使用料免税・財務省資料と一致)
数年前の体験です。現在の画面・流れはKDPの税務プロファイルで確認してください。
入金が「遅れてくる」のに戸惑った
売れているのはレポートで分かるのに、振り込まれない。最初はこれが不安でした。
KDPの支払いは売上が報告された月の末日から約60日後という仕組みで(基準の記事で公式の記載を引いています)、遅れているのではなく、そういうサイクルでした。仕組みを知ってからは何も困りませんでしたが、知らない間は「支払いに問題があるのでは」と余計な心配をしました。
一方で、売上の把握自体には困りませんでした。KDPのレポート画面を見れば、どの本が何冊売れたかは追えます。私の場合は冊数も金額も大きくなかったので帳簿はシンプルでしたが、いま振り返ると、会計ソフトの記事に書いたとおり月ごとのレポートを保存しておくのが正解だったと思います。入金明細だけが手元に残ると、どの月の売上に対応するのか後から追えなくなるからです。
表紙は自作した — その場合、経費はほぼ残らない
表紙は外注せず、自分でデザインツールを使って作りました。実用書だったので、タイトルが読めてジャンルが伝わればよい、という判断です。
やってみて分かったのは、表紙を自作すると、Kindle出版は経費がほとんど発生しないということです。在庫も印刷もなく、外注もしなければ、手元に残る「払ったお金」がそもそも少ない。経費の記事に「経費を積むより青色申告特別控除のほうが効く」と書いたのは、この実感からでもあります。
迷ったのは資料の書籍代です。執筆のために買った本と、もともと読みたくて買った本の境目が、自分でも曖昧になります。国税庁の基準は「業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」(No.2210)なので、区分を説明できる自信がないものは経費に入れない方に倒しました。読み放題サービスの扱いも同じ理由で深追いしませんでした。金額の小さい経費の判断で迷い続けるより、迷わない線を引くほうが楽でした。
申告は他の副業と合算だった
印税を単独で申告したわけではありません。私は他の副業の収入もあったので、印税はそこに合算するかたちで申告しました。
これは制度のとおりで、会社員の20万円ルール(No.1900)は「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額」で判定されます。印税が単独で20万円に届かなくても、他の副業所得と合わせて超えるなら申告が必要です。「Kindleの分は少ないから関係ない」という切り分けは、そもそもできません。
なお私の場合、手続き後は米国の源泉徴収が0%だったため、外国税額控除を使う場面はありませんでした。30%引かれていた期間がある人は、基準の記事の該当セクションを見てください。
いま振り返って、最初に知りたかったこと
- 1
税務インタビューはマイナンバーで済む。最初にやる
放置すると既定30%。数分の入力で条約どおりの税率になる。3年で期限が切れることも覚えておく。
- 2
入金は売上の約60日後。遅延ではなく仕様
月ごとのレポートを保存しておくと、あとで申告のときに困らない。
- 3
印税は他の所得と合算で考える
20万円ルールは合計額での判定。単独で小さくても関係ないとは言えない。
いずれも本文と各記事で一次ソースを引いている内容の要約です。
Kindle出版は、開業・税務まわりで見ると軽い働き方です。在庫がなく、経費が少なく、手続きの山場は最初の税務インタビューくらい。そのぶん、数少ない手続きを飛ばしたときの影響(既定30%)がはっきりしている、という構造でした。
手続きの全体像はKindle出版の開業届の出し方から順に読めるようにしてあります。


