メルカリやAmazonでの販売が続くようになると、「開業届を出すべきなのか」が気になってきます。
物販には、他の副業に無い前提がひとつあります。「売る」こと自体は、誰でも日常的にやっているということです。だからこそ、どこからが税務上の「事業」なのかの線引きを最初に確認する価値があります。
私物を売るだけなら税金はかからない
まず入口の整理です。所得税法9条1項9号は、非課税所得としてこう定めています。
自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得
その「政令」(所得税法施行令25条)は、生活に通常必要な動産を非課税の対象とし、例外を次のように限定しています。
生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のもの 一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品…… 二 書画、こつとう及び美術工芸品
着なくなった服や使わなくなった家電をメルカリで売る
生活用動産の譲渡=非課税。確定申告にも開業届にも関係しません。
1個30万円を超える貴金属・書画骨とうを売る
非課税の例外です。譲渡所得として課税の対象になりえます。
売るために仕入れた商品を売る
私物の処分ではないので、この記事の本題(事業・雑所得)になります。
所得税法9条1項9号・施行令25条に基づく整理です。
不用品の処分だけなら、この記事はここで読み終えて大丈夫です。
売るために仕入れたら話が変わる
仕入れて売る(せどり・転売・在庫を持つ物販)は、生活用動産の処分ではありません。利益が出れば課税対象で、規模と態様によって事業所得か雑所得に分かれます。
判定の軸は、国税庁の通達(所得税基本通達35-2)の注書きにあります。
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する
そして同じ注書きは、帳簿書類の保存を重要な材料として挙げています(帳簿の保存がない場合は原則として業務に係る雑所得)。つまり「継続して仕入れて売っていて、記録を付けている」なら、事業側に近づきます。
開業届はいつまでに出すのか
「開業から1ヶ月以内」と書いている記事をよく見かけますが、所得税法229条の現行条文はこうです。
その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに、税務署長に提出しなければならない
国税庁の手続案内(A1-5)も「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までに提出してください」としています。期限は開業した年分の確定申告期限です。
- 1
開業届を出す
開業した年分の確定申告期限まで
提出自体は無料。書く欄も多くない。
- 2
青色申告承認申請書を検討する
1月15日までの開業はその年3月15日まで それ以降は開業から2ヶ月以内
**開業届より先に期限が来ることがある**。在庫を持つ物販は帳簿が複雑になりやすいので、青色申告特別控除の価値が大きい。
国税庁A1-5・A1-8の記載に基づきます。
中古を仕入れて売るなら古物商許可の話が出る
税務とは別の制度ですが、物販ではセットで調べられるので触れておきます。古物営業法2条は「古物」を一度使用された物品などと定義し、古物を売買する営業(古物営業)を3条で都道府県公安委員会の許可制としています。
- 新品を仕入れて売る場合は古物ではない側の話です
- 中古品を転売目的で仕入れて売る形は古物営業に当たりえます
どの態様が許可を要するかの個別判断はこの記事の範囲を超えるので、管轄の警察署(公安委員会)に確認してください。無許可営業には罰則の定めがあります。
扶養や失業給付が気になる場合
配偶者の扶養に入っている場合、社会保険の被扶養者の判定に出てくるのは開業届の有無ではなく年間収入の見込みです(自営業は必要経費を控除した額で見ると日本年金機構が案内しています)。また失業給付の受給中に物販を事業として始めると「失業の状態」に当たらなくなるため、開業届の前にハローワークへ相談してください。
まとめ
- 私物の売却は非課税(所得税法9条1項9号)。1個30万円超の貴金属・書画骨とうだけが例外
- 売るために仕入れたら課税の話が始まる。事業かどうかは「社会通念上事業と称する程度か」+帳簿の保存
- 開業届の期限は「1ヶ月以内」ではなく開業した年分の確定申告期限まで(229条)
- 青色申告承認申請書の期限のほうが先に来ることがある(開業から2ヶ月以内)
- 中古品を仕入れて売るなら古物商許可(公安委員会)を確認する
次は開業届の職業欄に何と書くか、収入の基準はいくらから確定申告が必要かへ。

