物販の経費には、他の副業に無い仕組みがひとつあります。棚卸です。
ここを知らないと「仕入れに使ったお金を全額その年の経費にする」という間違いをします。多く仕入れた年ほど所得を少なく申告してしまう形になり、あとで直すのは手間です。先に仕組みから見ます。
経費になるのは売れた分の仕入代金だけ
国税庁のタックスアンサー(No.2210)は、必要経費に算入できる金額をこう定めています。
総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額
「総収入金額に対応する売上原価」——つまり、売れた商品に対応する仕入代金だけが、その年の経費です。売れ残りは所得税法47条の棚卸資産として年末に評価し、翌年へ持ち越します。
仕入 10万円
年内に仕入れた商品の合計
売上原価 6万円
売れた商品に対応する分。**この年の経費はここだけ**
期末棚卸 4万円
売れ残り。翌年に持ち越して、売れた年の経費になる
No.2210と所得税法47条に基づく整理です。
年末の棚卸のやり方
所得税法47条は、その年12月31日に有する棚卸資産(期末棚卸資産)を、選定した評価方法で評価した金額とすると定めています。実務としてやることはシンプルです。
- 12月31日時点の在庫を数える(何が何個残っているか)
- 取得価額(仕入値)で評価して記録する
- 売上原価 = 年初の在庫 + 年内の仕入 − 年末の在庫
評価方法には種類があり、選定の届出をしなかった場合は政令で定める方法によることになります。どの方法を使うかまで含めて迷う場合は、税務署に確認してください。大事なのは「年末に在庫を数えて記録する」習慣そのものです。
物販でよくある経費
売れた商品の仕入代金
売上原価として経費
販売手数料・発送の送料・梱包材
経費にしやすい
売るために直接かかった費用です。
検品・撮影用の小物や機材
業務用なら経費
私用と兼ねるものは按分の話になります。
仕入のための交通費
記録があれば説明しやすい
どの仕入に対応するかをメモで残します。
売れ残った商品の仕入代金
その年の経費にはならない
棚卸資産として翌年へ。
No.2210の「収益とのつながり」を軸にした整理です。個別の可否は状況によります。
自宅の家賃や電気代は明らかに区分できる分だけ
在庫の保管に自宅を使う場合の家賃・電気代は、生活と業務が混ざった支出(家事関連費)です。No.2210の基準はこうです。
この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。
在庫専用の部屋・棚など、区分の根拠を作れる場合に限って按分を検討してください。
パソコンなど高額なものは金額で扱いが変わる
出品・管理用のパソコンなどは、10万円未満なら全額をその年の経費にでき、10万円以上20万円未満は3年で均等償却する一括償却を選べます(No.2100)。
[!IMPORTANT] 青色申告者の少額減価償却資産の特例(30万円未満・年合計300万円)は、現行条文では 「令和8年3月31日までに取得した資産」が対象で、この期日はすでに過ぎています。 過去に何度も延長されてきた特例なので、高額なものを買う前に国税庁のページで 現在の適用期限を確認してください。
まとめ
- 経費になるのは売れた分の仕入代金(売上原価)だけ。売れ残りは棚卸資産として翌年へ
- 年末に在庫を数えて取得価額で記録する(所得税法47条)。売上原価=年初在庫+仕入−年末在庫
- 手数料・送料・梱包材は売るための直接費用として整理しやすい
- 自宅の家賃・電気代は「明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られる
- 説明も区分もできない支出は入れない。迷ったら税務署・税理士へ
次は会社に知られずに物販をやるにはです。

