「コンサルタントは源泉徴収されない」という説明を見かけます。根拠として挙げられるのが、所得税法204条1項の列挙に「コンサルタント」という語が無いことです。

語が無いのは事実です。ただし、そこで止めると条文の半分しか読んでいません。

204条1項2号は政令に委ねている

まず柱書きです。

居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

その2号がこれです。

弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金

最後の「その他これらに類する者で政令で定めるもの」が要点です。列挙はここで閉じておらず、政令に続きがあります。

政令に「企業診断員」がある

その政令が所得税法施行令320条2項です。

法第二百四条第一項第二号に規定する政令で定める者は、計理士、会計士補、企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)、測量士補、建築代理士(建築代理士以外の者で建築に関する申請若しくは届出の書類を作成し、又はこれらの手続を代理することを業とするものを含む。)、不動産鑑定士補、火災損害鑑定人若しくは自動車等損害鑑定人(…)又は技術士補(技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者を含む。)とする。

「企業経営の改善及び向上のための指導を行う者」——これは経営コンサルタントの仕事そのものの説明です。

条文の読み方

204条1項2号

弁護士・税理士…技術士 **その他これらに類する者で政令で定めるもの**

施行令320条2項

計理士、会計士補、**企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)**…技術士補

結論

**「コンサルは源泉徴収されない」と一律に書くのは、この政令と衝突する**

該当するかどうかは支払の内容で判断されます。当サイトでは個別の当否を断定しません。

括弧書きが資格で切っていない

もう一段読み込むと、括弧書きの構造が効いていると分かります。

  • 企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む)
  • 技術士補(技術士又は技術士補以外の者で技術士の行う業務と同一の業務を行う者を含む)
  • 建築代理士(建築代理士以外の者で建築に関する申請若しくは届出の書類を作成し、又はこれらの手続を代理することを業とするものを含む)

どれも「資格を持っている者」に加えて「同じ業務を行う者」を含める書き方です。つまり資格の有無では切れていません。「診断士に登録していないから関係ない」という読み方は、この括弧書きと合いません。

研修と投資助言は1号の系統

コンサルの仕事に混ざる研修・セミナー・投資助言は、2号ではなく1号の側です。204条1項1号の政令である施行令320条1項にこうあります。

技芸、スポーツその他これらに類するものの教授若しくは指導若しくは知識の教授の報酬若しくは料金又は金融商品取引法第二十八条第六項(通則)に規定する投資助言業務に係る報酬若しくは料金

「知識の教授」と「投資助言業務」が名指しされています。1号には条文本体にも「講演料」があります。研修の講師料が引かれているなら、根拠はこちら側にあることになります。

源泉徴収するのは支払う側

ここまでは「対象かどうか」の話で、実際に引くのは支払う側の義務です。柱書きのとおり「支払をする者は…所得税を徴収し…納付しなければならない」と書かれています。

そして支払元が個人の場合には例外があります。国税庁No.2502の記載です。

また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はありません

所得税法204条2項2号が同じ構造を定めていて、1号から5号などの報酬のうち「給与等につき所得税を徴収して納付すべき個人以外の個人から支払われるもの」には1項が適用されません。相手が人を雇っていない個人事業主なら、引かれないことがあるということです。

[!IMPORTANT] 自分の報酬が実際に該当するかどうかを、当サイトでは断定しません。 判断するのは支払者で、契約の内容や業務の実態によって変わります。請求と入金が合わないときは、まず支払明細の「源泉徴収税額」の欄を確認し、不明なら支払者と税務署に確認してください。

引かれていてもいなくても申告は要る

最後に、源泉徴収の有無と確定申告の要否は別の話です。

  • 引かれている場合: その分は前払いで、確定申告で精算する(還付になることもある)
  • 引かれていない場合: 納める税額は自分で計算して申告・納付する

どちらでも、判定は所得(収入−経費)で行います。金額の基準と精算の考え方はいくらから確定申告かの記事にあります。

まとめ

  • 204条1項に「コンサルタント」の語は無い。ただし2号は「その他これらに類する者で政令で定めるもの」で閉じていない
  • 政令(施行令320条2項)に「企業診断員(企業経営の改善及び向上のための指導を行う者を含む。)」がある。「コンサルは源泉徴収されない」と一律に書くのは条文と衝突する
  • 括弧書きは資格の有無で切っていない(技術士補・建築代理士も同じ構造)
  • 研修・セミナー・投資助言は1号の系統(施行令320条1項の「知識の教授」「投資助言業務」)
  • 引くのは支払う側の義務。支払元が給与を払っていない個人なら引かれないことがある
  • 該当の判断は支払者が行う。 当サイトでは個別の当否を断定しない

次は「やってはいけない業務の線と契約の守り」を予定しています。