コンサルの職業欄は、他の職業と事情が逆です。多くの新しい働き方は個人事業税の一覧に名前が無いのに対し、コンサルタント業は名指しで列挙されている側でした(開業届の記事)。

ではどのコンサルでも同じかというと、そうではありません。通知が名指ししているのは2つだけです。

通知が名指ししているのは経営と技術の2つ

総務省の通知(地方税法の施行に関する取扱いについて・道府県税関係)の(15)は、コンサルタント業の中身を具体的な名称で挙げています。構造を分けるとこうなります。

通知が挙げている区分例示されている名称
経営コンサルタント業企業診断士、経営士、経営管理士、経営調査士、財務管理士等
技術コンサルタント業技術士、設計コンサルタント、建設コンサルタント等
そのほか美容コンサルタント業、旅行コンサルタント業等

原文は開業届の記事に全文を引いています。読みどころは、どれも「○○等の名称を用いて行われる」という形で書かれていることです。資格を持っているかどうかではなく、その看板で仕事をしているかという書き方になっています。

ITコンサル・システム顧問は通知に出てこない

ここが実務でいちばん詰まるところです。事業税の章を通しで確認したところ、「ソフトウェア」「システム」「情報処理」「プログラム」「コンピュータ」「IT」のどの語も1度も出てきませんでした(2026-10-05 に確認)。

コンサルの種類と、通知の記載の有無
  • 経営の改善・計画を助言する

    経営コンサルタント業として名指しがある

    企業診断士・経営士・経営管理士などの名称が例示されています。

  • 技術の設計・監理を助言する

    技術コンサルタント業として名指しがある

    例示は技術士・設計コンサルタント・建設コンサルタントです。

  • ITの導入・システムの顧問

    通知に記載が無い

    IT関連の語が事業税の章に1度も出てきません。実態で判定されます。

  • 研修・セミナーの講師

    業種としての記載が無い

    後述。源泉徴収の話と混同しないでください。

「記載が無い」は課税されないという意味ではありません。地方税法72条の2の各区分には「前各号に掲げる事業に類する事業で政令で定めるもの」という項目があり、当てはめは実態で決まります。

ただし「記載が無い=かからない」ではありません。 東京都主税局は法定業種について「ほとんどの事業が該当します」としていますし、条文には類する事業を政令で定める項目があります。ITコンサルがどの業種に当たるかを一般化して示した公的資料は確認できなかったので、当サイトでは断定しません。事業の所得が事業主控除290万円に近づいてきたら、都道府県税事務所に確認してください。

研修・セミナーも業種としての記載が無い

コンサルの仕事には研修や講演が混ざります。この通知で「研修」という語が出てくるのは従業者の数え方(課税標準額の分割)の文脈だけで、業種の定義としては出てきません。

混同しやすいのが源泉徴収です。講師料から源泉徴収されるかどうかは所得税の話(所得税法施行令320条1項の「知識の教授」など)で、都道府県税の業種判定とは別の制度です。報酬から10.21%が引かれていたとしても、それは事業税の業種を決めません。源泉徴収の側(コンサル報酬は源泉徴収されるのか)は、このクラスタの専門の記事で扱う予定です。

「中小企業診断士」は条文に出てこない

職業欄や肩書きで迷うもう1つが、この名称です。「有資格者でないと名乗れない(名称独占)」という説明を見かけますが、中小企業支援法の現行条文を確認したところ、「診断士」という語は1度も出てきませんでした。

同法11条1項が定めているのは、名称ではなく登録の制度です。

経済産業大臣は、中小企業者がその経営資源に関し適切な経営の診断及び経営に関する助言(以下単に「経営診断」という。)を受ける機会を確保するため、登録簿を備え、中小企業の経営診断の業務に従事する者であつて次の各号のいずれかに該当するものに関する事項を登録する。

[!IMPORTANT] 名称の使用を制限する定めは、この法律の中に確認できませんでした。 そのため当サイトでは「名称独占」と書きません。一方で、登録を受けていないのに受けているかのような名乗り方は、相手に誤解を与えます。登録していないなら、その名称は使わないという判断で足ります。

職業欄の書き方の候補

以上をふまえると、迷いにくいのは次の形です。

実態から選ぶ職業欄の言葉
  • 経営の相談・計画づくりが中心

    経営コンサルタント業

  • 技術・設計の領域が中心

    技術コンサルタント業

  • ITの導入支援・技術顧問が中心

    実態をそのまま書く

    「ITコンサルタント」「システム顧問」など。概要欄で中身を具体化します。

  • 複数が混ざっている

    中心のものを職業欄に

    開業届は人ごとに1枚。残りは「事業の概要」欄にまとめます。

どれを書いても税額は変わりません。役所が実態を把握しやすい言葉を選びます。

職業欄で税額は選べません。 実態と違うことを書かない、それだけです。

共通の仕組みは共通編へ

職業欄に決まった書き方が無いこと・判定が実態で行われること・事業主控除290万円・青色申告特別控除が加算されること・都道府県への事業開始等申告書は職業欄と個人事業税の共通編にまとめてあります。

まとめ

  • 通知が名指ししているのは経営コンサルタント業と技術コンサルタント業の2つ(ほかに美容・旅行)。どれも「○○等の名称を用いて行われる」という書き方
  • ITコンサル・システム顧問は事業税の章に1語も出てこない。ただし「記載が無い=かからない」ではなく、類する事業の項目があり判定は実態
  • 研修・セミナーも業種としての記載が無い。講師料の源泉徴収は所得税の別の話で、業種を決めない
  • 中小企業支援法に「診断士」の語は無い。11条が定めているのは経営診断の業務に従事する者の登録簿。名称制限は確認できなかったので「名称独占」とは書かない
  • 職業欄で税額は選べない。実態と違うことを書かない

次は「収入がいくらから確定申告か」を予定しています。開業届の手順は開業届の記事へ。