コンサルの「不安」は、他の職業と形が違います。会社に知られることよりも、仕事の中身が資格業の領域に入ってしまうことのほうが実害に近い。
線の向こう側には、罰則のある法律が6本並んでいます。先に全体を置きます。
税金の計算に関する相談
税理士法52条
税務相談は同法2条1項3号で定義されています。
契約・紛争の代理や法律事務
弁護士法72条
「報酬を得る目的で」「業とする」が要件に入っています。
官公署に出す書類の作成
行政書士法19条1項
「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」とあります。
登記の手続
司法書士法73条1項
労働社会保険の手続
社会保険労務士法27条
投資助言
金融商品取引法29条
登録を受けた者でなければ行えません。
いずれも条文の定めです。自分の案件が当たるかどうかの判断は、弁護士など有資格者に確認してください。
税務は税理士法52条
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
「税理士業務」の中身は同法2条1項で、3号が税務相談です。
税務相談(…租税の課税標準等(…)の計算に関する事項について相談に応ずることをいう。)
「計算に関する事項について相談に応ずること」という定義です。制度の一般的な説明と、具体的な計算に踏み込む相談が、条文の上では別のものとして書かれています。経営の助言のなかで税金の話が出たときに、どちらをしているのかを意識しておく意味がここにあります。
法律事務は弁護士法72条
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。
要件に「報酬を得る目的で」と「業とする」が入っています。契約書の内容について有償で意見を述べたり、相手方との交渉を代わりに行ったりする場面は、この条文の射程を意識する場面です。
官公署に出す書類は行政書士法19条
行政書士又は行政書士法人でない者は、他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て、業として第一条の三に規定する業務を行うことができない。
「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」が効きます。補助金の申請書類を作って「コンサル料」に含める形でも、名目を変えただけという読み方になります。
登記は司法書士法73条
司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。
同条3項には名称の制限もあります。
司法書士でない者は、司法書士又はこれに紛らわしい名称を用いてはならない。
労務手続は社労士法27条
社会保険労務士又は社会保険労務士法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。
人事制度の設計を助言することと、労働社会保険の手続書類を作成・提出することは、条文の上で分かれています。
投資助言は金商法29条
金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。
投資助言業務は金融商品取引業に含まれます。登録が前提の領域です。
[!IMPORTANT] 自分の案件がこれらに当たるかどうかを、当サイトでは判断しません。 ここに置いたのは条文そのものです。実際の線引きは業務の内容・対価の有無・継続性で変わるため、迷う場面があるなら、その分野の有資格者(弁護士・税理士など)に確認するか、提携して一緒に受けるのが現実的な対処になります。
自分を守る側にもルールがある
ここまでは「やってはいけない」側ですが、自分を守る側の法律もあります。フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)です。
取引の条件を明示させるのが3条1項です。
業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法…により特定受託事業者に対し明示しなければならない。
支払期日に上限を置くのが4条1項です。
報酬の支払期日は、…当該特定業務委託事業者が特定受託事業者の給付を受領した日…から起算して六十日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない。
同条2項は、支払期日が定められなかったときは受領した日が、60日を超えて定められたときは受領日から60日を経過する日が支払期日とみなされるとしています。「決めていなかった」は相手の有利にはなりません。
やってはいけない行為を並べるのが5条1項です(一定期間以上の業務委託が対象)。
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付を受領した後に返品すること
契約条件が口頭のままで進んでいる案件があるなら、3条の明示を求めるところから始められます。
会社に知られたくない場合は共通編へ
住民税の経路・「自分で納付」の効く範囲と限界は会社に知られたくない人の共通編にまとめてあります。就業規則の副業規定の確認は別途必要です。
まとめ
- 越えると資格法に当たる領域が6つ(税理士法52条・弁護士法72条・行政書士法19条・司法書士法73条・社労士法27条・金商法29条)
- 税務相談は「計算に関する事項について相談に応ずること」と定義されている(税理士法2条1項3号)
- 行政書士法19条は「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」。コンサル料に含めても同じ
- 当たるかどうかの判断はしない。 迷うなら有資格者に確認するか、提携して受ける
- 守る側にはフリーランス法がある。3条の明示義務・4条の60日(定めなければ受領日とみなされる)・5条の受領拒否や減額の禁止
次は「会計ソフトと請求書の選び方」を予定しています。
