コンサルの請求と帳簿には、他の職業と違う条件が3つ揃います。仕入れがほとんど無い、報酬から所得税を引かれる、取引先がほぼ課税事業者。この3つで、ソフトを比べる前に決めることが先に出てきます。

この記事は消費税の話が中心です。所得税の帳簿の義務や青色申告の控除は 共通編にまとめてあるので、そちらと合わせて読んでください。

登録すると売上の大きさに関係なく納税義務が生じる

インボイス登録を「請求書に番号を足す手続き」だと思っていると、ここで足をすくわれます。国税庁の注記です。

(注2)適格請求書発行事業者の登録を受けた課税事業者は、基準期間の課税売上高にかかわらず、消費税の納税義務は免除されません。

免税事業者の判定(前々年の課税売上高1,000万円以下)とは別に、登録そのものが納税義務を連れてくるという書き方です。No.6501 も、1,000万円以下でも納税義務が免除されない場合の1つ目として「適格請求書発行事業者の登録を受けている場合」を挙げています。

では登録しない選択はどうか。コンサルの取引先は法人がほとんどで、相手は仕入税額控除を気にします。インボイスを出せない相手から仕入れたときに控除できる割合は、2026年10月1日に8割から7割へ下がりました(よくある勘違い12)。登録しない側から見れば、取引先が負う分が一段増えたということです。

登録するかを決めるときに見ているもの
  • 取引先が課税事業者の法人ばかり

    相手は控除を気にする

    登録しない場合、相手側の負担は2026年10月から7割控除に下がった分だけ増えています。

  • 登録する

    売上1,000万円以下でも納税義務が生じる

    登録と納税義務はセットです(No.6498 注2)。

  • 登録する

    氏名が公表サイトに載る

    屋号の公表は別途申出が必要です(後述)。

  • 登録しない

    請求書に登録番号を書けない

    適格請求書は登録を受けた事業者でなければ交付できません。

どちらが有利かは取引先の構成と売上規模で変わります。個別の判断は税務署か税理士に確認してください。

登録すると氏名が公表サイトに載る

兼業で請けている人には、こちらのほうが重く響くかもしれません。

登録申請書を提出し、税務署における審査を経て、適格請求書発行事業者として登録された場合は登録番号が通知されるとともに、「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」において適格請求書発行事業者の登録番号や氏名または名称等の情報が公表されます

個人事業者の場合、既定で公表されるのは氏名のほうです。屋号は逆の扱いになっています。

(注4)個人事業者等で、「主たる屋号」や「主たる事務所の所在地」の公表を希望される場合は、別途「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」を提出する必要があります。

登録番号は個人の場合「T+13桁の数字」で、法人番号を持つ事業者と構成が違います。

[!IMPORTANT] ここで公表されるのは消費税の登録に関する情報で、勤務先に通知が行く仕組みの話ではありません。会社に知られたくない場合の住民税の仕組みは副業を会社に知られたくないときの住民税にまとめています。両方とも「絶対に知られない」とは書けない性質のものです。

納税額の計算方法は3段階で変わる

登録したあと、納税額をどう計算するかには選択肢があります。個人事業者にとっては、ここが年によって変わるのが厄介なところです。

  • 令和8年分(2026年分) — 2割特例が使える最後の課税期間
  • 令和9年分・令和10年分 — 個人事業者だけの3割特例
  • 令和11年分以降 — 一般課税か簡易課税

期限の根拠と3割特例の適用除外はよくある勘違い11に原文で置いてあります。この記事では、その先に残る簡易課税をコンサルの数字で見ます。

簡易課税のサービス業は50パーセント

簡易課税は、売上の消費税額にみなし仕入率を掛けた額を仕入れの消費税額とみなす仕組みです。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間で使えます。

国税庁の事業区分の表で、サービス業はこうなっています。

第5種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除きます。

表に「コンサルタント業」という語はありません。 判定の仕方のほうに書かれています。

第5種事業も、第1種事業から第3種事業以外の事業とされる事業を対象として、おおむね日本標準産業分類の大分類に掲げる分類を基礎として判定します。

つまり「コンサルは第5種」と名指しされているのではなく、産業分類の大分類に当てはめた結果としてサービス業に入るかどうかという形になっています。職業欄の記事で見た個人事業税の業種判定と同じで、自分の役務の中身で決まる部類の論点です。研修・開発・常駐など複数の形で請けている場合はなおさらなので、区分は税務署に確認してください。

なぜコンサルでこの50パーセントが効きやすいのか。みなし仕入率50パーセントは、実際の課税仕入れに係る消費税額が売上税額の半分に届かないなら、一般課税より納税額が小さくなるという意味です。コンサルの原価は自分の時間で、外注や仕入れが少ない年ほど実額の控除は小さくなります。自分の数字で両方を計算して比べるのが前提ですが、比べる価値はあります。

届出は「初日の前日まで」と2年の縛り

計算方法は申告書で選ぶものではなく、届出で決まります。

簡易課税制度の適用を受けようとする事業者は、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を納税地の所轄税務署長に提出することにより、簡易課税制度を選択することができます

個人事業者の課税期間は暦年なので、原則は前年の12月31日までです。ただし、免税事業者から登録して課税事業者になる場合と、2割特例・3割特例を使った翌課税期間には、後から出せる扱いがあります。

2割特例や3割特例の適用を受けた適格請求書発行事業者が、その適用を受けた課税期間の翌課税期間に係る確定申告期限までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その翌課税期間から簡易課税制度の適用を受けることができます

やめるときは逆方向に動きません。

簡易課税制度の適用を受けている事業者は、事業を廃止した場合を除き、「消費税簡易課税制度選択届出書」の効力が生ずる課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出することはできません。

さらに、収入が動く働き方で引っかかるのがこの注意事項です。

この届出書を提出した事業者のその課税期間の基準期間における課税売上高が5,000万円を超えることにより、その課税期間について簡易課税制度を適用できなくなった場合またはその課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下となり免税事業者となった場合であっても、その後の課税期間において基準期間における課税売上高が1,000万円を超え5,000万円以下となったときには、その課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を提出している場合を除き、再び簡易課税制度が適用されます

一度出した届出書は、間に適用されない年が挟まっても消えずに残るという書き方です。売上が年によって上下するフリーランスは、「あの年に出した届出」を自分で記録しておく必要があります。

請求書の記載事項に源泉徴収税額は無い

ここがコンサル固有の落とし穴です。報酬から10.21パーセントを引かれる取引なのに、インボイスの要件にその欄はありません。国税庁が挙げる記載事項(請求書・納品書等を交付する場合)はこれだけです。

①書類作成者の氏名または名称および登録番号 ②取引年月日 ③取引内容(軽減税率の対象品目である旨) ④税率ごとに区分して合計した税込対価(又は税抜対価)の額及び適用税率 ⑤税率ごとに区分した消費税額等 ⑥書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

源泉徴収は所得税の制度で、インボイスは消費税の制度です。請求書に源泉徴収税額の行を入れるかどうかは取引先との運用の問題で、入れなければ適格請求書にならないという話ではありません。

実務で効くのはその先です。引かれた所得税は前払いなので、申告で精算しないと戻ってきません(いくらから確定申告か)。請求書に書いていなくても、自分の帳簿では総額の売上と引かれた税額を分けて持つ必要があります。入金額をそのまま売上にすると、売上も前払いの税額も消えます。

もう1つ、消費税額を区分して請求するかどうかで源泉徴収の対象額が変わる扱いがあります。これは請求書の様式の決め方に直結するので、コンサル報酬は源泉徴収されるのかで原文を確認してください。

なお、登録した場合の交付義務は相手を限って課されています。

適格請求書発行事業者には、適格請求書を交付することが困難な一定の場合を除き、原則として、取引の相手方(課税事業者に限ります。)の求めに応じて、適格請求書等を交付する義務および交付した適格請求書等の写しを保存する義務が課されます。

写しを保存する義務まで含まれている点に注意してください。発行して送っておしまいではありません。

インボイスの保存期間だけ別の数字になる

所得税側の保存期間(法定帳簿7年・その他の書類5年)は共通編にありますが、消費税の仕入税額控除のための保存は別の起算点と年数で書かれています。

その保存期間については、その閉鎖または受領した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地またはその事業に係る事務所等に保存しなければなりません

ただし、6年目および7年目は、帳簿または請求書等のいずれか一方を保存すればよいこととされています。

「請求書は5年」と覚えていると、消費税の側で足りなくなります。長いほうに合わせるのが安全です。

コンサルで足す確認点

共通編の5つの基準に、コンサルではこの4つを足して見ます。

ソフトと請求書の様式を決める前に確かめること
  1. 1

    登録するかを先に決める

    登録=納税義務。相手の控除(現在7割)と氏名の公表を並べて判断する

  2. 2

    計算方法と届出の期限を確認する

    令和8年分は2割特例が最後。簡易課税へ移るなら届出の期限と2年の縛りを見る

  3. 3

    請求書に源泉徴収税額の行を置くか決める

    インボイスの要件ではない。消費税を区分請求するかどうかと合わせて決める

  4. 4

    総額と源泉を分けて記帳できるか試す

    入金額をそのまま売上にしない。前払いの税額が残る形にする

順位は付けません。要件で絞ってから無料で試す手順は共通編にあります。

明細の自動取込と青色申告対応をうたうソフトは各社から出ていて、マネーフォワード クラウド確定申告ADもその1つです。コンサルの場合は取引の件数が少ないぶん自動取込の価値は小さく、源泉徴収された報酬を1件入れてみるのが一番効く試し方になります。

共通の要件と手順は共通編へ

帳簿の義務・55万円と65万円の控除の要件・選ぶ基準と手順は会計ソフトの選び方・共通編へ。消費税の経過措置の期限はよくある勘違いにまとめてあります。

まとめ

  • 登録と納税義務はセット。1,000万円以下でも、登録すれば納税義務は免除されない(No.6498 注2)
  • 公表サイトに既定で載るのは氏名。屋号や所在地は別途申出
  • 簡易課税のサービス業は第5種50パーセント。ただし表に「コンサルタント業」の語は無く、産業分類の大分類を基礎に判定する
  • 届出は課税期間の初日の前日まで(特例あり)。やめるには2年、しかも出した届出は適用されない年を挟んでも残る
  • 適格請求書の記載事項に源泉徴収税額は無い。それでも自分の帳簿では総額と前払いを分ける
  • 消費税の保存期間は2か月を経過した日から7年。所得税側の5年に合わせて捨てない

次は「コンサルの税務で、公式にはこう書かれている」を予定しています。