会計ソフトの紹介は「銀行口座とカードをつなげば帳簿ができる」という説明から始まりますが、同人はその前提から外れます。

入金明細だけでは同人の売上は復元できない

理由は単純で、同人の売上は口座を通らない経路を含むからです。

同人の売上がどこから来るか
  • イベントでの対面頒布

    口座に入ってこない

    現金でその場で完結するため、明細には一切現れません。

  • DL販売の分配金

    自動取込が効く

    ただし入るのは手数料を引いた後の金額です。

  • 書店などへの委託分

    入金は後から届く

    頒布の時期と入金の時期がずれます。

  • 年末に残った在庫

    そもそも取引ではない

    数えないと経費が確定しません(後述)。

自動取込で埋まるのは一部だけです。

つまり同人でソフトに期待できるのは入金の取り込みまでで、現金と在庫は自分で入れることになります。ここを分かったうえで選べば、「取り込んだのに数字が合わない」で悩まずに済みます。

イベントの現金は記録が先でソフトは後

現金頒布で問題になるのは、後から思い出せないことです。その場で残すものと、あとでまとめて入れるものを分けます。

  • その場: 頒布数と単価、釣銭の準備額と残額。スペースで紙に書いておく
  • あと: その日の合計をソフトに入れる

入力の細かさは、国税庁が白色申告の方の記帳について書いているところが目安になります。

記帳に当たっては、一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。

1冊ごと・1人ごとの明細を作る必要はないということです。まとめられる単位は日々の合計なので、1日で終わるイベントはその日の合計で1件、2日開催なら日ごとに1件ずつになります。

在庫を数えないと年内の経費が決まらない

同人の帳簿でいちばん見落とされるのがここです。No.2210が経費に挙げるのは「総収入金額に対応する売上原価」で、印刷費のうちその年の経費になるのは頒布できた分だけです。残った分は所得税法47条の棚卸資産として翌年へ持ち越します(条文と計算は同人の経費一覧)。

会計ソフト側の話に直すと、12月31日時点の残部を数えて入力する作業が毎年発生するということです。ソフトを選ぶとき、年末の棚卸を入力する画面があるか(=売上原価を計算してくれるか)を見ておくと楽になります。

数えた結果は棚卸表という書類になります。国税庁の保存期間の表は「決算に関して作成した棚卸表その他の書類」を5年としているので、作って終わりではなく残しておくものです。

販売経路ごとに総額と手数料を分ける

DL販売と委託は手数料を引いた額が振り込まれます。入金額をそのまま売上にすると、売上も経費も実際より小さくなります。総額を売上に立てて、手数料を経費に立てるのが基本形です。

同人の場合はこれが経路の数だけ発生します。どのサービスの分か分かるように、月次の販売履歴を保存してください。プラットフォーム側の履歴の保存期間はサービスごとに違うので、溜めずに毎月落とすのが安全です。

同人で足す確認点

  • 現金の売上を手入力できるか(イベント単位でまとめて入れられるか)
  • 年末の棚卸を入れて売上原価を出せる
  • 経路ごとに総額と手数料を分けて記帳できるか

明細の自動取込と青色申告対応を掲げるソフトは各社から出ていて、マネーフォワード クラウド確定申告ADもその1つです。ただし現金と在庫は自分で入れる部分なので、最初のイベント1回と年末の棚卸を通してみて、自分の運用に合うかを確かめてください。

共通の要件と手順は共通編へ

帳簿の義務・55万円と65万円の控除の要件・選ぶ基準と手順は会計ソフトの選び方・共通編へ。

まとめ

  • 同人はイベントの現金年末の在庫が自動取込で埋まらない。ソフトに期待する範囲を先に決める
  • 現金はその場で紙に残す。記帳は日々の合計でまとめてよい(簡易な方法)
  • 12月31日の残部を数えるまで、その年の経費は決まらない(47条)。棚卸表は5年保存
  • DL販売・委託は総額と手数料を分ける。販売履歴は毎月落とす

次は「同人の税務で、公式にはこう書かれている」を予定しています。