同人の税務で固有に効く根拠は、通達に「原稿、さし絵」という言葉が実際に載っていることと、在庫・赤字・外注の3点です。このページはその原文を置いた場所で、同人クラスタの各記事の数字はここか共通編に遡れます。同人活動の実体験が無いため体験談は置いていません。

同人で固有に効く根拠を集めた

このページに置いてある原文

所得税基本通達 35-2

「原稿、さし絵」の報酬を**業務に係る雑所得の例示**に挙げている。注に判定基準と300万円

No.2250 注2

**雑所得の損失は他の所得から控除できない**(損益通算の対象は4所得)

No.2502

**給与について源泉徴収義務を持たない個人**が払う報酬に源泉徴収は不要

No.2210 (1)

経費になるのは「**総収入金額に対応する**売上原価」=売れた分の原価

特商法施行規則 23条1号

通信販売の広告に**氏名又は名称、住所及び電話番号**

いずれも国税庁・e-Gov・東京都主税局の現行ページで確認したものです。

原稿とさし絵は通達に名前がある

出発点は所得税基本通達35-2です。柱書きと、同人に当たる号の原文はこうです。

35-2 次に掲げるような所得は、事業所得又は山林所得と認められるものを除き、業務に係る雑所得に該当する。

(4) 原稿、さし絵、作曲、レコードの吹き込み若しくはデザインの報酬、放送謝金、著作権の使用料又は講演料等に係る所得

読み方の順番が大事です。「事業所得と認められるものを除き」が先にあり、その残りが業務に係る雑所得になります。同人の頒布はこの(4)の言葉に近いところにいるので、事業だと言えるかどうかを自分で説明できるかが分かれ目になります。→ 開業届を出すべきか

帳簿をつければ事業所得とは書かれていない

35-2の注が判定を定めています。

(注) 事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。

判定の本体はここです。帳簿の話はこの後に「なお」で続く別の話で、帳簿があれば事業所得になるとは書かれていません。書かれているのは逆向き(保存が無い場合は雑所得に該当することに留意する)です。

300万円は例外の中に出てくる数字

その「なお」以下がこれです。

なお、その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する。

300万円は括弧の中の除外条件として出てきます。「300万円を超えたら事業所得」という単独の線引きではありませんし、その括弧の中でも「かつ、事業所得と認められる事実がある場合」という条件が付いています。

イベントの赤字は給料と通算できるとは限らない

同人でいちばん誤解の多い点です。No.2250は損益通算の対象を不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の4つに限ったうえで、注2でこう書いています。

(注2) 配当所得、給与所得、一時所得および雑所得の金額の計算上損失が生じることはありますが、その損失の金額は他の各種所得の金額から控除することはできません。

業務に係る雑所得なら、イベントの赤字で給料の源泉徴収税額が戻ることはないということです。事業所得と認められる場合は通算の対象に入ります。→ 経費一覧

表紙を外注しても源泉徴収はしなくてよいことが多い

No.2502の原文です。

また、給与所得について源泉徴収義務を有する個人以外の個人が支払う弁護士報酬などの報酬・料金については、源泉徴収をする必要はありません

人を雇っていない個人サークルが表紙イラストを外注しても、源泉徴収して納付する側にはならないという読み方になります(所得税法204条2項2号が同じ構造です)。人を雇っている場合は前提が変わります。

刷った分ぜんぶは経費にならない

No.2210が必要経費に挙げる1つ目はこれです。

(1)総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額

「総収入金額に対応する」が効きます。印刷費のうちその年の経費になるのは頒布できた分の原価だけで、残りは棚卸資産として翌年へ持ち越します(所得税法47条)。→ 会計ソフトの選び方

通販の表示義務は税務とは別の話

同人では、税務の手当てと混ざりやすい論点がもう1つあります。特定商取引法施行規則23条1号です。

一 販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称、住所及び電話番号

これは税の条文ではありません。住民税の「自分で納付」を選んでも、この表示義務には何の影響もありません。→ 会社に知られずに同人活動をするには

個人事業税の法定業種には漫画・小説が見当たらない

東京都主税局の法定業種の一覧では、デザイン業(第3種)と物品販売業(第1種)は明記されている一方、文筆業・著述業は見当たりません。同人は列挙のある側と無い側をまたぐ働き方だということです。判定は名称ではなく事業の実態で行われます。→ 職業欄には何と書くか

断定しなかったこと

一次ソースで一般化できなかったものは、このガイドでは断定していません。

  • 事業所得か業務に係る雑所得かの個別判定。通達の判定基準は「社会通念上事業と称するに至る程度」で、規模ややり方で変わります
  • 販売プラットフォームの分配金に源泉徴収があるか。支払の性質(報酬か売上の分配か)で変わり、サービス横断で一般化できる公的資料を確認できませんでした。各サービスの規約と支払明細の源泉徴収税額欄が正です
  • 自分が特定商取引法の「販売業者」に当たるか。同法に定義規定が置かれておらず、事業性の判断になります

いずれも税務署・税理士、通販については消費生活センターや弁護士に確認してください。

職業をまたいで共通する根拠

判定軸・開業届の期限・経費の範囲・20万円・住民税・罰則の原文は税務の根拠・共通編へ。

まとめ

  • 通達35-2は「原稿、さし絵」を業務に係る雑所得の例示に挙げ、事業と認められるものを除く構造になっている
  • 判定の本体は「社会通念上事業と称するに至る程度」。帳簿も300万円も、その後ろの別の話
  • 雑所得の損失は他の所得から控除できない(No.2250注2)
  • 給与を払っていない個人に源泉徴収義務はない(No.2502)
  • 通販の表示義務は税務とは別(特商法施行規則23条1号)

最初から読むなら開業届を出すべきかへ。